野良猫幻想夢(上)

□魔法と人形
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仕事を終えたアリスはトレインに別れを
告げて再び空を飛んでいく。彼女の姿が
見えなくなるのを見届けるとトレインは
視界を空から門に向けて呟いた。

「さて…と!」

本の入った袋をギュッと握りしめ門を潜り
エントランスに入ったトレインは遭遇した
警備中のメイド達に何度か止められる。

「というワケで…そういう事情がだな…」

止められたメイド達に一々説明をしていき
誤解を解いたトレインは紅い廊下を歩いて
漸く自分の部屋に辿り着くことが出来た。
ガチャッと扉を開き中へと入っていくと…

「ん?」

今見える光景に言葉を発したトレイン……
月明かりで照らされた自分のベッドの上に
フランが寝ているのが視界に入る。それも
敢えて隣のスペースを空けている様子だ。

「フラン…俺が帰ってきたらすぐ寝れるように隣を…」

本の入った袋をテーブルに置いてフランの
元に歩み寄ったトレインが彼女の気遣いに
気付くとその目元には光る滴が2つ…頬を
伝って枕に落ちていく光景を目にする。

「!!」

昨日の夜フランがどう過ごしたのかがこの
涙で全て分かったトレインは胸がズキッと
痛くなる。それはこの前の自分とも重なる

「そうか…お前も1人で…辛かったんだな…ごめんな……約束破っちまって…」

フランの目元に指先を置いて涙を払って
謝るトレイン。それに無意識で反応した
フランはトレインの指先に触れて自分の
口元に持っていき左手の甲に鼻を当てて
ちょっと枯れた声で寝言を呟いた。

「トレイン…早く帰って…きて…」

「!」

「独り…やだぁ…」

「ごめん…ごめんな…っ!」

思わずベッドの上に乗ってフランの空けた
スペースに寝っ転がったトレインは左手で
フランの頭に触れて自分の方に寄せながら
ギュッと抱きしめる。今すぐに謝りたい…
だが時間も時間なのでもう少しして自然に
起きるまで待つことにしたトレインは今は
只…フランに謝り続けた。彼女を傷付けた
自分が許せずひたすら謝り続けた…

「………」

謝るうちに徐々に意識が遠退いていくのが
自分でも分かった。朝早く起きた為疲れが
出たのか徐々に半開きになっていく瞼……
気付くとトレインも眠りに落ちてしまう。
グリモワを届けるのは起きてからフランに
ちゃんと謝ってから届けようと夢に落ちる
寸前に抱いてトレインも眠りに就く…



博麗宴会祭

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