野良猫幻想夢(上)

□不吉の黒猫
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「これが……俺の全てだ」

全てを話し終えたトレインは深呼吸をした

「………」

「子供も時からそんな……」

「あの頃は生きる為に人を殺すしかなかった……それしか術を知らなかった……軽蔑するならしてくれて構わない」

「しないよそんなの!私だって……きっと同じ事をしたと思うから……」

「フラン……」

「けどそのクリードって男……なんだか危険ね」

レミリアはそう言うとトレインは
自分の胸に手を当てて言った。

「俺だって十分に危険だ」

「トレインは自分でストップを掛けられるんだからいいじゃん!私はきっと全てを……破壊していたと思う」

「………」

「話してくれてありがとう」

「ありがとうございます」

「ありがとう」

「トレイン……ありがとう」

全員が……あのレミリアすらお礼を
言うなんて思いもしなかったトレインは
この光景にびっくりしていた……
けどそれ以上に自分の過去を受け止めて
くれた全員にとても感謝していた。

「………」

「「「泣けよ!!!」」」

「まだその企画続いてんの!!?」

不意を突かれたその一言にトレインは
ツッコむ。そしてここで漸く夕食を
取る事にした全員は両手を合わせて言った

「「「いただきます」」」






夕食を済まし自分の部屋に戻った
トレインはあの時の言葉を思い出していた

「あの夜サヤは最後の花火が鳴る瞬間と同時に何かを言っていた……よく聞こえなかった最期のセリフ……それに忘れてくれて構わないってどーゆー意味だったんだよ……サヤ」

一一一ギィィィ

「!」

扉の開く音が聞こえる。開けた隙間から
体を覗かせて濡れた髪を揺らすのは
タオルを片手に持ったフランだった。
この様子からして入浴を終えたのだろう。

「もう寝るの?」

「あ、あぁ……」

開けた扉を閉めたフランはタオルを
テーブルに置くとベッドに上がる。
体育座りをする彼女は同じように
ベッドに腰掛けていたトレインに言った。

「今日はありがとう」

「!」

「辛かったでしょ?」

「いや……寧ろ逆にスッキリしたぜ!」

「?」

「ずっと1人で溜めてる事を誰かにうち明かすってのは結構楽になるもんだぜ」

「………」

だが言葉とは裏腹にトレインの背中は
何か寂しさを感じさせる……フランは
それが無性に悲しくて無言でその背中に
抱き付くと両手を彼の腹部にクロスさせる

「?……今日は随分とべったりだな……」

「トレインの気持ち分かるよ」

「!」

「そのサヤって人が言った事……昔の私にトレインが言ってくれたセリフと重なって凄く重かったよ」

「まぁアイツの受け売りセリフだからな……」

「トレイン……」

「ん?」

「泣きたい時は泣いてもいいんだよ?」

「!」

ズキッと胸が痛くなった……不安からか
嬉しさからか悲しみからかは知らないが
胸に感じる痛み……なんて表していいのか
よく分からない……答えが見つからない。
でも少し気持ちが楽になったのは分かる。

「………その企画は終了」

「私は本気で……」

「俺はお前が泣いたら涙を拭いてやるって前に約束したよな?」

「うん……」

「だから俺は拭いてあげれる存在にならなきゃならねぇ……そう易々と泣いちゃいけねぇんだ……男なら尚更な」

「でもトレインだって……」

「俺はあの時流した涙で十分だ」

「!」

「俺が誰かの必要な存在になれただけで俺は嬉しいんだ……」

「じゃあトレイン……」

「ん?」

「私も笑うから……トレインも笑って!」

ニコッと微笑みながらそう言うフラン。
その笑顔はまるで日輪の太陽のように
とても眩しく感じる……不安な気持ちも
一瞬にして明るく照らしてくれるような
そんな何かを秘めた表情……その笑顔に
トレインは何度も救われてきた……
そう思うと自然と彼からも笑みがこぼれた

「あぁ……枯れる程笑ってやる」

そして向かい合った2人は互いに
負けないぐらいの笑い声を挙げた。
不安を吹き飛ばすぐらいの大声で……

「アハハッ!」

「ハッハハ!」

「アハハハハッ!」

「ハッハハハハ!」

「アハハハハハハッ!ちょっ!アハハッ!トレイン!ストップ!やめ……クヒャン!やん!やめてよぉ!!!」

「?……なんで?」

「どうしてくすぐるの!?」

「だって笑うって言うから手助けでもしてあげようかなって……」

「無理に笑わせないでよ!」

「あぁ……悪い」

「「……プッ!……アッハハハ!」」

静かな夜の下……紅魔館には2人の
男女の笑い声が暫く響き渡った………


Four outside next people

Belief
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