野良猫幻想夢(上)

□野良猫の過去
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ユーラシア大陸のある場所に在る秘密結社
【クロノス】は世界の三分の一を牛耳って
その名を轟かす『三大組織』の1つである

張り詰めた空気の中クロノスの本部で黒い
コートに身を包んだブラウンの癖毛をした
1人の男が両手を拘束されモニター越しに
映る年長の男の前に連行された形で現れる

「………」

その男の後ろでは金色の長髪女性が左手に
剣の鞘を掴みその青年を静かに見ている。

「………」

「『黒猫』……お前の最近の戦果は聞いている」

年長の男が言う黒猫とはその男の通り名で
あり組織で呼ばれるコードネームでもある

「………」

「『時の番人』(クロノ・ナンバーズ)である者の戦果とは思えんな……最近の度重なるミッションの失敗」

今回呼ばれた理由は青年の最近の任務での
戦果についてだった……だが青年は顔色を
変えることもなく静かに返答を返した。

「調子が出ねぇだけだぜ」

「言え黒猫!貴様に何があった!?」

モニターから長老の怒鳴る声がその部屋に
響き渡る。だが青年の表情は尚も変わらず
拘束された手に力を入れながら言葉を返す

「俺は只『アイツ』の生き方に共感しただけだぜ?首輪に繋がれる人生よりはな」

「飼い猫の貴様に自由などない!」

「飼い猫だろうと野良猫だろうと猫ってのはもっと自由に生きるもんだぜ?」

あくまでその抱く意思を変えない青年は
更に長老を怒らせることに繋がっていく。

「どうやら貴様とは別の機会にまた話さなければならないようだな…」

「………」

「ハートネット…」

『ハートネット』と呼ばれる青年と長老の
やり取りを見ていたその女性は不安を意味
している心配した血相で黒猫を見ていた。

「すまねぇな隊長……世話掛けてよ…」

黒猫が言う隊長と呼ばれた女性は青年が
連行され何処かに連れて行かれる様子を
心配そうに見つめていたが自分の立場上
何も出来ないことに歯痒さを感じていた。

そしてその青年……黒猫は感じていた。

現実世界……腐った世界に俺の居場所は在るのか?
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