野良猫幻想夢(上)

□もう1つの世界
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『時間』はどの場所にも平等に存在する。
『空間』はどの場所にも平等に存在する。

だが世の中には見えない物や直視出来ない
ものが存在する。例えるならば幽霊など…

青年は目的地を何処と決めたワケでもなく
勿論クリードへの手掛かりもなく気ままに
前を歩いていた。途方に明け暮れる毎日。
だが組織は裏切り者を許すワケもなくもう
道行く先々にクロノスの手の者達が青年に
牙を向き襲い掛かる。つまり逃げる毎日…
その結果高飛びし国も『日本』へと変わる

飼い猫から野良猫に変わった実感が湧く。
だが人生はそんな甘いものじゃなかった。

「!」

「………」

ある日青年の視界に映ったのは嘗て自分の
上司だったあの女性…隊長だった。

「よぅ隊長……ここまで追いかけて来たのか!ご苦労さん。何しに来たって聞くまでもねぇよな」

「組織へ戻る気はないのですね?」

「ねぇな……俺はアイツの意志を引き継いだんだ!鎖はもう契れた…」

約束を破ってしまい申し訳ない気持ちを
抱く青年だがそれでも自分の今の意思は
曲げなかった。それ以上の約束と使命を
果たさなければならなかったからだ…

「…なら私は」

そう言うと隊長は左手に持っていた剣の
柄を右手で掴んでキンッと刃先が鞘から
抜ける音と共に細く長い赤黒い切っ先が
姿を現しそれを青年へ向けながら言った。

「裏切り者を始末します」

「だろうな。だが俺も……負けるワケにはいかねぇんだ」

そう言いながら青年は右太腿に付けられた
ホルスターに手を伸ばしそこに装備された
黒い装飾銃『ハーディス』を抜いた。
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