野良猫幻想夢(上)
□黒と紅【孤独】
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地下室へと繋がる階段を一段一段ゆっくり
下りていくトレインだったが徐々に感じる
嫌な威圧感が身を軋ませていた。
「…!」
紅魔館に入った瞬間から感じていたこの
威圧感は特に地下室の中から強く感じる。
異質の圧力で全身の骨が軋むような感覚。
階段を下り終えたトレインは視界に映る
扉を発見する。見るからに頑丈な外壁に
埋め込まれた扉からは威圧感が漏れる…
そして重い扉を開き中に入ると地下室に
居たのは1人の少女だった。深紅の瞳は
扉を開けたトレインを見つめる。
「…誰?」
「!!」
生気を感じられない深紅の奥に秘められた
深い悲しみをトレインはすぐに察知した…
そして脳裏に浮かんだ1つの過去は自分の
幼き頃の血みどろな黒い記憶…
「あぁ…えっと……お前に会いに来た…」
「えっ?」
「特に深い意味はないんだがな…」
「…遊びに来たの?」
「ん?」
「私と遊んでくれるの?」
「遊ぶ?…あぁそーゆー意味か!レミリアの奴この子の遊び相手になってくれって意味で俺を此処に来させたんだな!」
「アナタは……アイツの命令で来たの?」
「あ、あぁ……それと俺はトレイン=ハートネットだ……お前は?」
「…フランドール……フランで良いよ……トレイン」
「フランか……でもなんでこんな地下室に幽閉されてんだよ?」
「アイツが…」
「?」
「アイツが許してくれないの」
「アイツ?……レミリアのことか?」
「私の『能力』が怖いからみんな私を……こんな所に」
「ワケ有りか…」
レミリアは何故そんな彼女の元へ自分を
行かせたのかをトレインは考え始める…
すると体を起こしフランが近付いてきた。
「トレインは遊んでくれるの?」
「あぁ別に構わないぜ!けどこんな何もないとこで俺は何をすれば良いんだ?」
「…じゃあ」
「!!」
その瞬間空気が変わったように禍々しい
威圧感が地下室を包み込む。それは最初
自分が感じた圧力とは比にならない程の
悍ましいオーラ……だがそれに負けない
深い悲しみもトレインには伝わっていた。
「壊れるまで…遊んで…」
「なんだ…こりゃ!!?」
フランの放つ紅い威圧感に今まで経験した
中で一番の戦慄を抱くトレイン。体中から
汗を垂らし血相を顰めながら後退る。
「こりゃ本気で…死ぬぜ俺…!」
「トレインはすぐに壊れないでね…」