野良猫幻想夢(上)
□黒と紅【責任】
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「ハッ!?ずっとって…お前!」
「問題あったかな?」
「大有りだ!人の寝込み襲いやがって!」
「………」
冷たくされたと思いフランはさっきまでの
笑顔から一転して落ち込んでしまい今にも
泣きそうな顔を見たトレインは更に慌てて
フランの背中をトントンしながら言う。
「い、いや嘘!嘘だぜフラン!俺が急変したら大変だから側にずっと居てくれたんだよな!?本当にありがとな!フランはめちゃくちゃ良い子だよ!」
「フラン…良い子?」
「あぁ!」
「えへへ…褒められちゃった…」
褒められたことがないフランはトレインに
初めて褒められて嬉しそうに微笑みながら
羽をパタパタさせる。なんとか機嫌を直し
笑顔に戻ったフランを見て胸を撫で下ろす
トレインは改めて今度はフランのご機嫌を
損ねないように気を遣いながら聞いた。
「じゃあ3日間ずっと側に居てくれたんだな。ちなみに此処は?」
「此処は紅魔館だよ」
「だよな…」
「トレインは絶対安静だって言ってたよ……体中ボロボロで特に右腕は骨折してるって…お医者さん言ってた…」
固定された右腕は確かに動く状態ではなく
トレインはシュンとするフランの頭に手を
置いてポンポンしながら言った。
「フランは悪くないぜ」
「私がやったんだよ?」
「それでもフランは悪くない」
「………」
「いつまでも暗い顔してっとお仕置きしちゃうぜフラン」
そう言うと同時にトレインは動く左手で
触れてたフランの頭からがら空きだった
腋に手を置き指先でくすぐり始める。
「ヒャァ!?ックヒャハハハハッ!!」
意表を突かれて笑い転がるフランの瞳には
もう深い悲しみはない。漸く訪れた自由は
フランの全てを変えた。くすぐれば素直に
笑ってくれるのは感情が戻った証拠である
縛っていた鎖は契られた…
すると少しして扉が開いて咲夜が紅茶を
持って2人の居る部屋に入ってきた。
「フラン様紅茶のご用意が…!」
「アヒャハハハハハハッ!ダメェ!そこは…クヒュッ!くすぐったいぃ!!」
「ほれほれぇ……いっ!?」
咲夜の存在に気付きくすぐる手を止めた
トレインからは再び大量の汗が流れ出る。
「意識が戻って随分と調子が…良さそうですね…」
「違うこれは!」
「羨ま…いや破廉恥なことする元気があるならもっと早く目を覚ましなさい!」
そう言いながら放たれた1枚のナイフは
見事にトレインの額にぶっ刺さった。