野良猫幻想夢(上)
□黒と紅【運命】
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翌朝。鳥の囀りが聞こえる部屋に入室する
彼女の名は咲夜。毎朝彼を起こしにやって
くるのが日課になりつつあった。
「トレインそろそろ起き…!」
咲夜の言葉は途中で止まり視界はベッドに
向けられる。そこには同じベッドで仲良く
スヤスヤと眠っているトレインとフラン。
「スゥ…スゥ…」
「………」
「…またフラン様と羨ましいことを…!」
今の状況を羨ましがっている咲夜だったが
トレインの目元に視線がいくと瞼の近くで
光る滴を見つける。それが涙だと分かると
昨晩は泣いていたのかもしれないと抱いた
「あらあら…フラン様に慰めてもらったんですかね…」
そう言うと咲夜はゴソゴソと懐に隠してた
カメラを取り出すとピントを合わせる。
「とりあえず…」
レンズをトレインへ向けて1枚写真を取る
咲夜……これは俗に言う盗撮である。
「お嬢様の寝顔を盗撮……いや収める為に持っていたカメラがまさかこんなところで使えるなんて……さぁ2人共起きてください!もう朝ですよ?」
盗撮したカメラを懐に仕舞ってから咲夜は
ベッドで眠る2人を起こすことにした。
「ぅん…」
「もう朝か…」
起き上がるトレインに咲夜は少し意地悪な
笑みを浮かべて茶化すように言った。
「良い夜をお過ごしになられたのでは?」
「………」
忘れたくなるような恥ずい昨日の出来事…
『重要』な事は決して忘れないトレインの
知能がこんなところで仇となってしまった
「それとトレインもそろそろ着替えた方が良いですよ」
「だな。昨日…いや4日も着替えてないと流石に気持ち悪いしな」
「ではあとで着替えを持って来ますね」
「すまねぇな」
「ではフラン様もお着替えください」
「でもトレインが寂し…」
「俺は大丈夫だから…」
「ホントに?」
「あぁ。だからちゃっちゃと着替えてきちゃえよフラン」
「う、うん」
まだ何か言いたそうなフランだったが今は
敢えて言わずに布団から出て部屋をあとに
するフランを確認した咲夜は言った。
「では朝食を済ませたあとに着替えを持って来ますから寂しがらないで待っててくださいね。泣いちゃ駄目ですよ?」
ウインクしながらそう言った咲夜は扉を
開いて部屋をあとにする……勿論咲夜の
言葉にトレインはかなり戸惑っていた。
「…え゛っ!!?」