野良猫幻想夢(上)

□不吉の黒猫
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俺がまだ10歳の頃だ……この時から
俺の平穏だった生活は大きく変わる……

唐P1年前

「な……何だよ……これ」

家には知らない男と血だらけで
横たわっている両親……まず
この状況の理解まで大分かかった。

「子供が居るとは……聞いてなかったな」

謎の男は俺に銃を突き付けて言ってきた。

「生きたいか?小僧……」

「!」

その男が言った一言はあまりにも突然
過ぎて俺はもうワケが分からなくなって
……逃げたいが足も動かない。ロクに
思考すらもちゃんと上手く働かない。
そんな状況の中男はもう一度俺に問いた。

「選ばせてやる……生きるか死ぬかを」

雨が降る夜……聞こえるのはポツポツと
雨水が家の屋根に当たる音と男の声だけ。

そして俺はこの男を殺す為に……
それだけの為に生きる道を選んだ。

その男の名はザギーネ。殺し屋だった。
俺の両親は依頼されて殺された。
そして俺はターゲット外だったらしく
ザギーネは依頼以外の無駄な殺生は
好まない性格だった……だからあの時
俺にあんな事を聞いたんだと思う。

俺はその日から奴の家に住む事になった。
そして最初に渡された物が拳銃だったんだ

「護身用だがお前はこれを使いこなさなきゃならねぇ……分かるか?」

「!?」

「お前は生きる道を選んだんだ……だから次は生きる術を知らねぇといけねぇ」

「!」

「俺が殺しの技術を叩き込んでやる……」

それから4ヶ月間俺は奴への殺意が
途絶える事はなかった……

「………」

私室で静かに読書をするザギーネ。
そこに勢いよく扉を開き駆け出した俺は
手に握る拳銃をそいつに向けて構えた。

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

拳銃を10歳の子供が撃つなんて普通
有り得ない話しだ……人を殺す道具に
俺は恐怖しながら引き金を引いた……

一一一パンッ

目を瞑り発砲の刹那弾丸はザギーネには
届かず逸れて花瓶に命中していた。
おまけに銃ってのは子供の腕力じゃ
ロクに制御も出来ないんだ。
その理由に発砲したと同時に
拳銃は俺の手元から転がり落ちていた。

「おわっ!」

そして倒れる俺を容赦なくザギーネは
踏みつけながら当たり前のように言った。

「殺すなら頭を狙うな……命中率が低い。狙うなら心臓を狙え!心臓なら外してもどこかしらに当たる可能性があるからな……それともっと腕力をつけろ!発砲の反動で銃が飛ぶのは問題外だ」

「殺して……やる!」

「フッ……殺気だけは一人前なんだがな」

何故奴は自分を殺そうとしている
俺に銃まで持たせ殺しを教えるのか
分からなかった……いずれ自分の命が
狙われるって事も知らないで……






「85……86……」

「手を止めたらぶっ放すぞ?」

「87……88……」

腕立て伏せは毎日100回はやらされた。
そして手が止まるとこれも当たり前の
ように銃を突き付けて脅しやがるんだ。





そして毎回腕立て伏せが終わると
ザギーネは牛乳を飲めと言いやがる。

「飲め」

「………いらない」

「いいから飲め……栄養もあるし骨も堅くなる」

「………」

変な奴だってずっと思ってた……
そして憎い程殺したかったのに……
時間の経過は怖いもんで気付くと……
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