野良猫幻想夢〜An additional story〜

□Episode1
2ページ/8ページ

小鳥が鳴いた。まるで今日の始まりを告げるように起床する者達へ呼び掛ける。此処は幻想郷……様々な世界で幻想と化した者達が集う世界。そんな世界にも人間達は暮らしている。そこは人間の里と呼ばれていた。

5ヶ月前に起きた大きな異変の影響で幻想郷の各地は今でも復興が行われている。普段妖怪や異変から身を守ってもらっている人間達は少しでも日頃の恩を返そうと、幻想郷の各地に出向いて復興を手伝っていた。だがそれを付け狙う悪い妖怪達も中には居た。

幻想郷にはある掟があり、人里に居る人間は捕食してはいけないというものだった。だが裏を返せば人里から出た人間は捕食して良いとも捉えられる。八雲 紫が冬眠しているのを良いことに復興の手伝いの為人里を出た者達が相次いで妖怪の被害に遭う日々が続いた。そこで人間達は気付かされた……いつまでも守ってもらう前提でいてはならないと……我々も己を守る術を得なければならないのだと…

「………」

「コラッ!寝るなぁ!!」

「うわぁぁぁ!?」

人里の寺子屋の室内で勉学に励んでいた子供達。その中で1人だけ机に顔を付けて居眠りをしていた橙色の短髪の少年に叫んだのは寺子屋の先生こと上白沢 慧音だった。怒鳴られて開いた青い瞳が慧音を捉えると、彼女が怒っている顔を見て青褪めていくのを感じた……彼の名前は齋木 董耶。13歳の少年で正義感の強い性格だが、今の慧音の前では弱々しい態度だった。

「私の授業で居眠りするとは良い度胸だなぁ董耶…」

「いや…その…ちょっと目を閉じたら寝ちゃったというか…」

「問答無用だ!!」

「あがぁぁぁぁぁ!?」

言い逃れも出来ず両肩を掴まれた董耶は慧音から重い頭突きを受けて悶絶する。畳の上で悶えている董耶の隣でクスクスと笑っている少女。ショートヘアの黒髪で浴衣のような和服を着ている彼女の名前は月乃 紗夜。見た目は8歳に見えるが、こう見えて11歳である。

「トウヤ君…命知らずだね」

「起こしてくれよ紗夜…」

「悪いのはトウヤ君でしょ?授業中寝ちゃいけないんだよ?」

「…相変わらず真面目だなぁ」

「トウヤ君が不真面目なだけかもよ?」

「真面目だよ俺だって。只やりたいことが勉強じゃないってこと」

「まだ言ってるの?トウヤ君はまだ小さいから警備隊には入れないっておじさん達言ってたじゃん」

「だけど俺…みんなの為に戦いたいんだ!もう守られるだけの男には…なりたくない!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ