野良猫幻想夢〜An additional story〜
□野良猫放浪夢【前編】
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「ちょ!ちょっと待てよ!なんで俺が殴られなきゃならない!?」
人気もなく辺りには野原が広大に広がり汚染されていない湖をバックに男は木にもたれ掛かりながら目の前で右拳を胸の高さまで上げてギュッと握り締めている青年が不敵に笑みを浮かべて立っていた。その様子からは今にでも男を殴り飛ばせる体勢に入っているのが見て取れる。
「殴られる理由?ならよ〜く今まで自分がしてきた過去の記憶をもう一度思い出してみな?おっと戻り過ぎるなよ?最近の出来事だぜ?それも今アンタが姿を眩まさなきゃいけなくなった理由だよ」
「……あ」
「どうやら思い出したみたいだな!んじゃ遠慮なく……」
トゲトゲの癖毛の髪が風に煽られながら青年はニッと笑みを浮かべると再び拳にギュッと力を加える。男はまた恐怖心を抱くも今度は何かを語りかけるワケでもなくぶっ飛ぶ程度の力で男を殴り飛ばした。
「ぐはっ!!」
ぶっ飛んだ。男の顔面には綺麗に殴られた痕が痛々しく刻まれ痛みによる動揺で男は起き上がっても逃げることが出来なかった。
「さてと…」
殴り飛ばした動作で身に付けていた青いジャケットと中に着ていた白いシャツを正しながら青年はゆっくりと数m離れた男に向かって歩み始める。徐々に自分へ近付いてくる青年に男は再び恐怖などに襲われたがもう青年にはその気はなかった。
「く、来るなぁ!」
だが男は気が動顛したように腕を振り回し青年を寄せ付けようとしない。目を瞑って視界を鎖しているところからして青年にも今の男が動揺しているということは簡単に分かった。それでも青年は歩みを止めずに迫る腕を右手で受け止める。男は自由が利かなくなったことで再び目を開き青年を視界に捉える。そして男の緊張が最高潮を迎えた時青年はその場にしゃがみ込んで左手を出しながらその男に言った。
「パンチ一発確かに配達したぜ!依頼主はアンタの元彼女からだ!不倫も大概にしとかねぇといつか殺しを依頼されるかもよん……まぁそれは『届け屋』の仕事じゃねぇけどな」
「そ…それで…その手は?」
「ん?パンチ速達代金3000イェン……相手持ちでって話しなんで今現金か小切手でいただこうか!」
「だ、誰が払うかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
静かな草原に新たに広がったのは男の声。荒れる声によって青年の首に巻かれた赤い首輪に付けられた黄色の鈴は左右に揺れた 。
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