□神田書店店長・神田その3
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逃がすには惜しい巨乳だった。
だから斎藤さんに『足が痛いらしいからユウちゃんが責任を持って送っていけ』と言われた時には内心であったりまえだろ!と思ったのだ。だってぶっといフラグをその斎藤さんの登場でへし折られた代償として、それくらいおいしいフラグを用意してくれないと割に合わないと思わねえか?。
けどいざ二人っきりになってしまうと何を話したらいいかなんてわかんねぇし、運転中にもずるずる下がるメガネは鬱陶しいし、車の中は動く密室、巨乳女体と二人きり、なのに頭の中ではその巨乳を好き勝手にする妄想だけが膨らんで、未だナニも出来やしない。
だから信号待ち中にも下がり続けるうざいメガネを、これじゃ隣の乳が見えやしないと外してみた。んでちらりと横目で目を細めてこっそり眺めた、のだがなぜか女は身体を引き引き助手席のドアを開こうとしてて、なにやってんだと内心首を傾げていると「降ります」だとさ…そうは問屋が卸すわけがない。
だから引き止めようと輪郭も曖昧なその顔(てか身体)に近付いたら、「もうすぐですから」なんて慌てふためいて挙動も不審な女の様子。なんだ?なにをそんなに慌ててんだ?人の顔を見ていながらも見てないような素振りをしてる「変な女」。
でも降りる前に信号は変わったからまぁいいか、車を発進させて女の指示通りのコンビニの角を曲がると途端に静かにはなった。やっぱり変な女だな。落ち着きがないっていうか店じゃ普通だったのに二人きりになったらおかしくなった。うーん、このフラグの意味するところはなんだろうか。だが俺の乏しい経験値からは汲み取れないので諦めた。

「ここです」そう言って指差したアパート。路肩に車を寄せ俺は車を降りる。どの部屋かは知らんが送りついでにこの女の居場所を知っておいて損はない、そう踏んで。
助手席の扉を開く。背中を向けて「乗れ」と屈めば女が驚いたみたいに息を呑む気配。
足を痛めた女をおぶってやろうとした、と、いえば体裁はいい。けど心の中ではおぶることでなし崩し的に背中に当たるであろうその巨乳と、タイトスカートだからおぶれば必然的に足を開かせられる(いやらしくていいな、おい)ので、わくわくしていたのだ俺は。だから早く乗れ。んで触らせろ、わくわく。

「一人で歩けますから大丈夫ですから」

……がっかりだった。
またあのいい匂いもついでに嗅ごうと思っていたのに、そう言って断る女にがっかりだった。
だからなんだとぉ!?と振り返ったら恐る恐るゆっくりと足を下ろしている女がいて、さすがに、なんかちょっと、申し訳なくなった。
痛めた右足首を庇うみたいな動き。見えない視界ながらも息を詰めて下ろしていく足に気が付いた時には俺は女の強がりだか気遣いだかに腹が立ってきて、素直におぶさればいいものを、そう思って「バカだな」って言えば言い返されそうになったから、そのまま女をその足に体重が乗る前に抱き上げた。

「やせ我慢すんな」

抱き上げた女を見下ろしそう言えば、緩んだツルがズレてメガネが落ちる、女の胸の上に。ぽよん、と。
うわー、乳の上に乗る俺のメガネ、羨まし過ぎる…なんて思ったのも束の間、女が「う」だか「あ」だか妙な声を上げて身体が揺れた。すると胸の上ではメガネが踊り俺のムスコもたぎりそうな光景が。
悔しい。なんだかずりぃぞ俺のメガネ。てかメガネに悔しがる俺って…と思ったがもはや頭の中はメガネに「代われ!その位置!」と叫びそうになっていた。そしてはっと気が付いた。そうだ、メガネはかけてしまえばいいのだと。
メガネは鼻の上に乗るものであって、決して乳の上に乗っていいものではない。だから元の位置に戻そうとしたんだが、いかんせん、両手は一杯に塞がって、これはこれで女体の感触が楽しい(柔らかくていい匂い…むはむは)のでその女体に頼むことにしたのだ。

どうしたんだ?

けど俺にメガネを戻してくれた女の手は、少し震えてる気がする。もしかしてまだあの『感度最高!熱くなろうぜローション』の威力が残っているのだろうか。だってかけてくれたメガネの中、女の顔は滅法赤い。ついでになんか少し呼吸も早くて苦しそう。でもちゃんと拭いてただろうし、って内心首を傾げたが、とりあえず、さすがにダンボール一杯の本ほどじゃなくても人間の身体、全く重くないって言ったら嘘になる。だから部屋の場所を聞いた。早く運ばないとやっぱ腕痺れそうだし…ま、この重さの半分は乳だと思えば軽いもんだがな、うんうん。

カンカンと音を立てて階段を上がる206号室、女の部屋。鍵を出し易いように足に負担をかけないようにゆっくりと左足から下ろしてやって、肩も貸して扉を開く。

「送ってくれて、ありがと」

そう言って少しはにかむように笑う女。その表情になんか俺の胸の中でかちんと音がしか気がしたが、まぁ元はと言えば俺のせいだしと言えばあっさり「あ、そっか」なんて否定もしない。でもまたお礼を言いながら閉じられていく扉に不思議となんだか別れ難い気分になる。てかまだ俺この巨乳女体とヤれてねぇし、そう思い出したら自然と閉まりゆく扉に足を挟んでいた。扉のぶつかる衝撃でまたメガネが下がりうぜぇなと上げると恐る恐る、といった感じで覗く女の顔が。

「な、なんでしょうか」

困惑したような上目遣い。大きいカーディガンのせいで途中まで隠れた指先が扉にかかるちょこりと覗く。見下ろしたらむっちりとした胸の谷間もばっちりがっつり見えて、隙間が開いたのをいいことにずいっと部屋に入ろうとしたら驚いた女が慌てて下がり、挙げ句痛めた足を着いてしまった、らしい。

「いったぁっ!」

ぎち、って音がしそうなほどに顔をしかめバランスを崩した女を、今度はこっちが慌てて手を伸ばす、手首を掴む、でも既に勢いよく倒れる途中、一緒くたになって俺も道連れ。



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