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□キスを40万回
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神田は意外なことにキスが好きなんだって、気が付いたのは付き合い初めてわりとすぐ。
教団の人気のない廊下。任務先の宿。もしくは互いどちらかの部屋。人目を忍んで私たちはキスを繰り返す。
『おはよう』
『おやすみ』
『いってらっしゃい』
『いってきます』
『おかえり』
『ただいま』
『ひさしぶり』
『あいたかった』
『すき』
『だいすき』
そんな挨拶のようなものから始まって、様々な想いを唇に乗せ言葉にする代わりに触れてくる神田は、普段あまり喋らないくせにその行動は饒舌で、普段冷たそうに見えるくせにこの態度は情熱的。おまけに一度触れただけでは止まらなくて私の呼吸が苦しくなってしまうのもしばしばで、その度、『苦しいよ』って訴えるのに、その度、彼はむしろ意地悪くもっと苦しくなってしまうようなキスをしてくる。
「…大丈夫、か…？」
肩で息をする私。「大丈夫だ」と答えたいけど呼吸を整えるので精一杯。けど「大丈夫か」とわざわざこうして聞くならば、「大丈夫」なキスをしてくれればいいのにと少し、恨み言のひとつだって言いたい、のに。
「か、んだ…」
息を吐き出しながら彼を呼び、その首に腕を廻す。いつの間にか私は彼とのキスに夢中になっている。一度触れただけで止めてほしくないって思ってる。もっと触れてキスして唇だけじゃイヤもっと全部全部ぜんぶ、私に触って心にキスして止めないで止めないで止めないで…ああほんとに、なんてことだろう。何度も何度もキスしても足りないなんてどうしてだろう。こんなにこんなに何十回、何百回、何千回、何万回とキスしても、きっと私はまだ足りない。
━━あなたのキスの、虜なの。━━
何度目かの唇が、せっかく整いかけた私の呼吸をまた乱す。
息苦しいほど強く、抱き寄せられる身体は隙間がないほど密着してるのに、もっとくっつけないのかな、なんて、このまま溶け合えればいいな、なんて、そんな想いを持つことは少し寂しい気はするけれど。
…だからねぇ、神田。そんなこと思ってられないほどキスしてよ。こんなこと考えてられないほど夢中にさせてよ。
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