手をのばして抱きしめて
□手をのばして抱きしめて 第7夜
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「なっ!」
俺はコムイのその話に固まる。
「それに神田くん、通信記録って知ってる?
神田くんからルキちゃんに、通信しているのなんてボクが知ってて当たり前でしょ。」
どうだ!と言わんばかりに見つめるその目はとても楽しそうで、俺は顔にどんどんと熱が上がるのがわかった。
「…まさか内容までは知らねえだろうな」
そう問うとコムイは目を逸らして吹き出す口笛。
聞いてやがるな!
「テメェ、コムイ
死ぬ覚悟はできてんだろうな!」
胸倉を掴む。
「え〜ボク一応室長だしぃ、必要とあれば聞いとかないといけないしぃ〜」
「必要ないだろうが!
つーかその喋り方ヤメロ。すげームカつく」
ギリギリと睨むがコムイは全く怯まない。
「うん、最近はあんまり聞いてないよ。」
…あんまりって何だよ。
「だって聞いててもつまんないしぃ」
「…テメェを喜ばす為にルキと話してる訳じゃねぇよ」
「うん、そうなんだろうけど、もうちょっとこうさ〜、恋人同士の甘〜い語らいってゆうの?そーゆーのが聞きたいのにさぁ、神田くん、割と事務的なんだもん」
「は?」
恋人同士?
誰と誰が?
コムイの言葉に驚いて、思わず胸倉を掴んでいた手を離してしまった。
「え?神田くん、ルキちゃんと付き合ってるんでしょ?」
コムイが俺の様子に不信そうに問いかける。
「何を勘違いしてるのか知らねぇが、別に俺達は付き合ってる訳じゃねぇよ」
今度はコムイが驚く。
「えっ、じゃあ恋人同士でもないのにルキちゃんとしてるって事なの?肉体の関係だけなの?」
ムンクの叫びのようなポーズがウザい。
「肉体の関係って…下品な言い方すんじゃねぇよ」
だいたいコムイだって言ってたじゃねぇか、他のエクソシストと関係を持たれても困るってな。
「…それに今は戦争中だ、愛だの恋だの、甘っちょろい事言ってる場合でもねぇだろうが」
「それはそうだけど…」
しゅんと肩を落とすコムイに背を向け、この話はもう終わりだと部屋を出ようとする。
「じゃあルキちゃんを他のエクソシストと組ませてもいいのかな?」
俺は振り返りコムイを見ると、やたら挑戦的な視線がそこにあった。
「それは…ダメだ」
「何故だい?
確かに以前ボクは神田くんにルキちゃんの事を任せたよ。だけどそれは神田くんに少しでも気持ちがあると思ったからなんだ。
しかし恋人でないなら、それを神田くんが決めるのは、少し横暴じゃない?」
非難するようなセリフに俺は無意識に答えを出す。
「…あいつは俺のだ。
好きとか嫌いとか、そんなんじゃねぇ。
ルキ全てが俺のものだ。
俺だけのものだ」
だから誰にも渡さねぇし、一緒に行かせねぇ。
そう言い捨て今度こそ室長室を後にした。
もう深夜1時近い。
思ったより室長室で時間を過ごしてしまった。この時間ではもうルキは眠ってしまっているだろう。
「チッ」
舌打ちし、団服のポケットに入っている鍵を握りしめる。
初めてルキの部屋に入った時に使ったその鍵は、そのままずっと俺が持ち歩いていた。
とりあえず寝顔だけでも見ようとルキの部屋へと向かうと、途中にある談話室に電気が点いている。