手をのばして抱きしめて

□手をのばして抱きしめて 第10夜
4ページ/4ページ

そして静かに言葉を続ける。

「…もしそこでルキがイノセンスの影響に負けて、ラビと寝てしまっていたら、どうなっていたと思う?
確かにその時点でルキの気持ちはわからなかったかもしれないわ。でも神田を好きという可能性だってあった筈よ。
神田が好きで、でもイノセンスの影響に負けて、…そんなのって、あんまりじゃない」

あんまりにも、辛いじゃない。

泣きそうな声でリナリーは俯いてしまった。
沈黙が流れる。
俺達は返す言葉も無かった。

「…ありがとう、リナリー」

いつの間にかリナリーの後ろにルキはいた。

「ルキ…」

振り返りルキを見る。
ふわりとルキがリナリーを抱きしめてその髪を撫でた。

「ホントにリナリーは優しいね。私の事なんて気にしないで、大丈夫だから」

優しく微笑み話しかけるルキに、リナリーは顔を上げてぶんぶんと首をふった。

「『私なんて』って言わないで!ルキはもっと自分自身を大事にすべきだわ!」

「僕もそう思います。」

モヤシもやってきて俺達を睨む。

「全く、ルキさんの気持ちを賭けの対象にするなんて、本当にバカな人達ですね。
神田、あなたは特に。
ほとんど2人で行動していたのに、何故ルキさんに直接聞かないんです?とんだヘタレですよ。」

「…黙れモヤシ。
テメェに何がわかるってんだ」

立ち上がりギロリと睨み付ける。

「僕がバ神田の事なんてわかるわけないでしょう。大体、あなたは言葉が足りなすぎるんです。
前にも言いましたけど、ルキさんの事思ってるくせに、ちゃんと伝えないからそんな事になるんですよ。
女性に負担をかけるなんて最低です。最悪です。」

モヤシがルキの傍に行き、その肩を叩く。

「だからこんなヘタレバ神田なんかとはさっさと別れた方がいいですよ?他にいい男は沢山います」

僕もいますし。

「えっ、ちょっとアレン」

戸惑うルキの手を取って、モヤシは紳士らしくその手に口付けを落とした。

「テメェこのモヤシ!」

この行動に俺の中の何かがブチ切れる。

「勝手に人のモンに触ってんじゃねぇ!」

モヤシが触れている手を叩き、まだリナリーを抱き締めているルキを引き寄せた。

「えっ、なに…んっ」

両手で両頬を包み強引に唇を合わせる。
舌を絡ませ口内を犯すと、ルキの身体から力が抜けるのがわかった。

…本当に俺はルキが好きだ。

またぶわりとさっき感じた愛しさがこみ上げてきて、唇を離しそのまま耳元に寄せ囁く

好きだ。

瞬間、ルキは真っ赤に染まった。
そんなルキを担ぎ上げ、周りのヤツら(特に野郎共)を睨み付けながら、俺は食堂を出る。俺の部屋に向かう途中、好奇の目をむけられたが、そんな事はもうどうでも良かった。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ