手をのばして抱きしめて

□手をのばして抱きしめて 第7夜
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ルキが教団に入って約2ヶ月、2人で何度か任務に赴いて分かった事がある。
とても、強い。
後から聞いたルキのシンクロ率は最高93%、ほぼ臨界点に近い。おまけに身軽で小回りがきき、体術も得意なので安心して背中を任せる事ができる。
つまりエクソシストとしては実に信頼がおける相手だった。
ただ一つ、ルキの例の体質を除いてだが。
普段教団にいる時はなるべくイノセンスを使った鍛錬をしないようにしていたが、任務となればそうもいかない。結局いつも2人でベッドに入る事になる。そしてそれを同行しているファインダー連中が気付かない筈はなく、俺達はあっという間に噂になってしまった。
他人の目なんて全く気にしない俺だが、その不躾な視線がルキにも向けられ、尚且つコイツの身体を舐め回すように見つめる男共に何度殺意を抱いた事だろう。
実際それに気付いた時はそいつを半殺しの目に合わせたが、結局それがコムイにバレ、「気持ちはわかるけどね」と苦笑いしながらも窘められた。
それからはそんな野郎がいても思いっきり睨み付けるだけにしているが、最初に一人医務室送りにしているせいか、皆、俺の殺されかねない視線に慌てて逃げて行く。
しかしいつも傍にいれる訳ではない。
あまり大きくない任務には俺一人で単独任務に出る事もある。そんな時はルキを教団に一人残す事が本当に気がかりで仕方がない。
一応ルキには発動するな、酒を飲むなと厳命しておき、コムイにも頼んである。
そしてそんな時は今はすっかり姉妹のように仲の良いリナリーが見ててくれているらしい。
だがそれでも安心できない俺は、手早く任務をこなし、例えそれが深夜になっても必ず完了次第教団へ帰ってきていた。

「過保護だねぇ」

今回も単独任務から戻ってくれば、もう次の日になろうかという時間帯。
報告書を室長室に持って行けば、少し呆れたようにコムイが呟く。

「今回の任務だって、最低でも一週間はかかる任務なのにルキちゃんが心配で4日で終わらせるなんて」

過保護以外の何物でもないよ、と溜め息をつかれた。

「…うるせぇ」

俺は疲れてるんだ。
早くルキの顔を見て、安心して、風呂に入って眠りてぇんだよ。

そう意味を込めて睨むが、コムイはそんな俺の心情を見事にスルーし話を続けた。

「だいたいさぁ、単独の任務先で泊まりになった時だって神田くん、ゴーレムでルキちゃんにお休みコールしてるじゃない?」

…何で知ってる?
ルキのゴーレムに直接繋げてる筈なのに。

「…まさか盗み聞きしてやがんのか?」

スラリと六幻を抜きコムイに向けた。

「まっさか〜。
ただルキちゃんがさ〜」

「…あいつが何だよ」

六幻を向けたまま問いかけると、コムイはますますそのにやけた顔で俺を見た。

「神田くんが任務でいない時は、どこにでもゴーレムを必ず、連れてるんだよ。
神田くんと一緒の時は全然、連れてないのにね〜」

これって神田くんからの通信がいつでも取れるようにだよね。かわいい事するよね、ルキちゃんも。
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