手をのばして抱きしめて
□手をのばして抱きしめて 第10夜
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ルキは最近、単独やルキの事を良く知るエクソシストとなら任務に出るようになった。
他のエクソシストと一緒の時はできる限り宿は別にし、ファインダーもベテランの信頼できるヤツがつく。不安や寂しさを感じないわけではないが、俺達の職業はエクソシストだ。今までが特別だっただけ。長期の任務になる時は必ず俺が一緒に組む事で今の所問題はない。
「あれ、今日はユウ一人さ?」
予定よりだいぶ早く任務が終わり食堂で一人、蕎麦を食べているとバカ兎からそう声をかけられた。ちなみにルキはモヤシと任務に出ている。
「ユウは最近落ち着いた感じな。
ルキのおかげかね。」
にまっと笑って手に持った俺の目の前の席にトレーを置く。
どうやら勝手に座るようだ。
「…何の用だ」
睨んでもコイツは無視してオムライスを食べ始める。
「ユウが一人寂しそうに食べてるから気になった。
ルキは任務なんさ?」
「…テメェには関係ない」
仏頂面で答え蕎麦を啜る。
「全く、ルキもこんな無愛想なユウのどこがいいんだか」
俺の方が絶対いいのにぃぃとスプーン片手に嘆く。
「うざいテメェよりはマシだろ」
「ひどっ、ユウちゃんひどっ!」
「その呼び方ヤメロ。」
立ち上がり六幻に手をかけると兎は慌てて俺を制した。
「ちょっ、待つさユウ」
「…殺す」
何度言っても呼び方を全く改める様子が全くないバカ兎に、ムカついた俺が六幻を抜こうとした時、後ろからパコっと叩かれた。
「もう、食堂で騒がないでよ」
リナリーだ。
資料か何かのファイルを持っている。どうやらこれで叩かれたらしい。
「チッ」
舌打ちし座り直してまた食事を再開すると、何故かリナリーまでもが勝手に俺の隣に座りやがった。
まず俺の許可を取りやがれテメェら。
「神田、ルキと一緒の任務が減って寂しいでしょう」
俺の気持ちを見透かすような笑顔そう言われ、更にムカついた。
「…」
もう無視を決め込んで蕎麦に集中する事にすると、今度は兎と話しだす。
「ルキって普段は気の抜けた感じの可愛さがあるけど、任務中すごく凛としてて素敵なのよね〜。」
「おお、それ激しく同感さ。
確かに普段はなんつうかノリも軽いしちょっと抜けてて、とても年上な感じがしないけど、任務の時は別さ〜」
もう、お姉さま〜って抱きつきたくなるさ〜。
目をハートにしてバカ兎が喚く。
やはり一度殺っといた方が良さそうだ。今は隣にリナリーがいるのでムカつくが大人しくしている。無闇に抜刀なんかすると、余計な事をコイツはルキに言いつけかねないからだ。
俺の女は口が良く回るし、人の気持ちを汲み取るのがとても上手い。何を言われようが上手に受け流し笑っている。俺と違って人付き合いも上手いのだ。
ただ人の気持ちを考え過ぎて、たまに自分の気持ちを抑え込んでいる時がある。
ルキが今までどう生きてきたか知らないし、無理に聞こうとも思わないが、親しくなり過ぎるのを恐れているようだった。
「でもルキはもう大丈夫なのかしら。
最初は神田としか組んでなかったのに、今は制約付きとはいえ、他のエクソシストとも任務に行ってるじゃない?」