カレーの神様
□カレーの神様 13皿目
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お父さん、恋ってなんですか?恋人ってなんですか?そういえばお父さんとそんな話、したことありませんでした。
お父さんとお母さんはどんな出会い方をして、どんな恋をしたんでしょうか。聞いてみれば良かったです。でも絶対に、
こんな始まりではないと思います。
初めてでした。
「ユウが寮を出てきた理由、教えて欲しい?」
…今…キスされた…
なのに身体が動かない。私は混乱していた。
ラビ先輩はゆっくりとそんな私をベッドに押し倒す。
「えみるちゃん、ユウの事、好きさ?」
好き?私が、神田先輩を?
「ユウひでえんだぜ、この前俺の彼女と寝やがってさ。」
普通友達の彼女と寝たりする?信じらんねぇ、ユウのヤツ。だからオレもさ、
「ユウの彼女、寝取っちゃおうと思ったんさ。」
「!?」
その言葉に意識が覚醒するようにやっと体が反応しだす。
ラビ先輩の体を思いっ切り押すが、逆にその腕を取られて両手一緒にまとめられた。
…やだ、怖い、怖い、怖いよ、神田先輩。
怯えて声も出ない私に、空いてるもう片方の手で羽織っていたカーディガンを脱がし、ワンピースのボタンを外しだす。
「大丈夫さ!オレきっとユウより優しいぜ?」
首筋にラビ先輩が顔を埋めたその時、
「えみる?」
階下から神田先輩の声がした。
帰ってきたらしい。思わず安堵して先輩を呼ぼうと開きかけた唇を、唇で塞がれた。
舌がゆっくりと差し込まれ、私の舌を探し、触れてくる。
…嫌だ!
その感触に身震いをすると唇が離れてその口が弧を描く。
「…さてここで問題です」
楽しそうにラビ先輩は笑っている。
「玄関にはオレの靴。居間にはまだ温かいお茶が2つ。そして今のこの状況。ユウが見たらどう思う?」
…今の、この状況…
「怒るかな?それとも無言で立ち去るかな?」
トントンと階段を上がってくる足音がする。
私はラビ先輩の下で服は半分脱がされ、スカートもぎりぎりの所まで捲れてる。
両手も掴まれてて身動きも出来ない。それ以前に頭も体も、そして気持ちもついてこない。
「いいんさ?逃げなくて」
「えみる?誰かいるのか?」
ラビ先輩と神田先輩の声が重なる。
私の頭の中は真っ白だ。
「開けるぞ」
それはまるでスローモーションのように。
ゆっくりと部屋のドアが開く。神田先輩がまずベッドの上のラビ先輩を認めてその目を見開く。それから視線が下に降り、私と、瞳が重なる。
「か、んだ…せんぱい…」
絞り出すようなか細い声がやっと私の喉から漏れた。と同時に視界が一気にぼやけた。
「…どういう、事だ?」
腕を組み、私とラビ先輩を交互に見比べる。
そんな神田先輩に私の上でラビ先輩はニヤリと笑った。
「今いい所なんさ。ユウ、邪魔しないでくれる?」
その言葉に先輩は無表情で更に問いかけた。
「…どういう事かと聞いている。
えみる、同意の上か?」
向けられたその視線に、思わず潤んだ私の瞳からポロリと涙が落ちた。
「神田、先輩…」
助けて…
上手く声が出せず、唇だけが動く。
神田先輩の眉間が恐ろしい程寄った。
「ラビ!テメェ!」
あっという間にラビ先輩が吹っ飛ばされて、壁際の本棚へぶつかる。
「痛いさ!ユウ!」
「ふざけんな!」
私に背中を向けた神田先輩の拳が固く握られ、それは震えていた。
「何さ。ユウだってオレの女と寝ただろ?」
お互い様じゃね?
あっけらかんと言い放つラビ先輩に、また神田先輩の拳が降る。
「こいつは違う!」
「どう違うんさ。有名だぜ?あの神田ユウが一人の女を大事にしてるって。」
怒りまくる神田先輩に比べて、何故かラビ先輩は冷静だった。