カレーの神様

□カレーの神様 14皿目
1ページ/2ページ

お父さん、私は今混乱しています。
もちろん生まれてから今まで、好きな人だっていました。でも、それは恋じゃなかったと今では思います。
怖いです。この気持ちも、自分自身も。
私は間違えてはいないでしょうか。お父さんもお母さんにこんな気持ちになったりしたのでしょうか。お願いです、お父さん、私に答えを下さい。






混乱してしまいました。






ああデジャヴ。
朝起きると、また私の隣りで眠る神田先輩がいるというこの状況。
ただ前と違うのは、ここは私の部屋で、私達はお互い裸だった。
うう、恥ずかしすぎていたたまれない。もう羞恥で涙が出そうだ。
それにまた頭が痛い。
ふと昨夜の事を思い出しす。

…ずっと泣いていた気がする。
だけど先輩はそんな泣いている私の名前を、何度も何度も呼んで、優しく丁寧に宥めてくれていた。
身体を合わせた時も、もっと自分勝手なのかと思ってたのに、こっちが切なくなる程優しくて、そして甘かった。流れる涙が違う意味を持つ頃にはもう私自身が堪らなくなって、必死で神田先輩を求めてしまっていたのだ。
…私、ヤバい。
今更ながらあまりにも大胆過ぎる自分の行動に、顔が熱くなる。
いやおかしいだろ、初めてだったのにあんなに、あんなに、…気持ちいいなんて。
うわっ熱いよ、身体が熱い。恥ずかしすぎて身体が熱い。もうどんな顔して先輩と話せばいいんだ。うう、泣きそう。
布団を引き上げてその中に顔を隠すと、すぐにそれを剥がされた。

「…相変わらず行動が怪しいヤツ」

くっと上から降る笑い声。
ああ目が合わせられない。なにこの状況。

「えみる」

俯く私を呼ぶ。
ダメだ、そんな甘い声で呼ばないで。私が私じゃなくなりそう。

「えみる、こっち向け」

命令口調、なのに、優しい口調。
大きな掌が伸びてきて、私の頭を…掴む?

「痛い痛い痛い!」

アイアンクローですか、神田先輩。

「痛いですってば、先輩!」

無理矢理その腕を外すと、今度はそのまま私の後頭部に回り、その裸の胸に引き寄せられた。

「…痛かったか?」

「そりゃそうですよ!
あんな力いっぱい頭掴まれたら!」

むぅっとなり答えると、私を抱きしめている先輩の腕が緩んで、顔を上げさせられた。

「ちげぇよ、このバカ!」

ぐっとアップで睨みつけられる。

違う?何が?

「テメェの頭じゃねぇよ、身体の事だ!」

身体、…身体!?

ぼぼっと顔が燃えるんじゃないかって位血が上る。
うわーん、このやり取り、いつもの私と神田先輩が逆じゃん。痛いのは私の思考回路だよ。もう涙が本当に出てきそう。

「…本当にテメェは」

溜息、そして苦笑され、言葉は続かない。
あれ?前もこんな風に言われたことあるぞ。いつだっけ。ああそうだ、以前私が先輩の作ったお蕎麦が美味しいって言った時だ。
どんな言葉が続くんだろ、と先輩を見ると、ニヤリと弧を描いた唇が私に降ってきた。

「んっ」

思わず漏れた声。ぞわりと背中に何かが這い上がる感覚。
優しいのにどこか性急な唇が、私の唇を食み、そして舌先が差し込まれてきた。
昨夜のラビ先輩との時は嫌で仕方なかった事が、神田先輩とならこんなにも身体を疼かせる。

「んんっ、あ…」

時々漏れる声が自分の声じゃないように聞こえた。

「…えみる」

神田先輩の身体が力なく私にのしかかる。
耳元で囁かれたその声にぞくりとしたが、何故か読めるこの先の展開。

「…お腹すいたんですか?」

その倒れ込む肩をポンポンと叩く。

「…何でわかった」

はいはい、わかりますよ。先輩ってそーゆう人だって事くらい。
朝の甘い雰囲気台無し。だけどその全く雰囲気ぶち壊しな神田先輩に、何となく安心してもいる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ