月のかげする水
□月のかげする水 第4壊
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「さて、探検探検〜と」
「大人しくしてろ」
宿について部屋に荷物を置き(しかもユウちゃんと同室。やったね!)、この町を探検しようとしたら襟首を掴まれた。ぐえ。
「コムイに頼まれてんだよ。あほが何か壊さないように見張っとけってな」
「ええ〜?もう壊す前提?」
「当たり前だ」
今までをテメェの胸に聞いてみろ。そう言われたので胸に手を置いて聞いてみた。
「…何も言わないよ?ユウちゃん」
「…お前俺をバカにしてんのか?」
睨まれた。
ぶんぶんと首を横に振る。
「なら大人しく座っとけ」
「ええ〜」
「ええ〜じゃねぇ」
それとも外に何かあんのかよ。いつも任務の度に探検に行きやがって。
その質問にこくんと頷くと少し驚いた顔をされた。
「確認作業をしてるっス」
「確認作業?」
何だそれ、と眉間に皺。
「ううんと、水のある場所を確認してんの。池とか、噴水とか、水気のある所」
「…確かお前のイノセンス…」
「うん、知っての通り、私の中の水と外の水を混ぜる事で、その水を使う事も出来るからね」
ぶっちゃけ、そっちのが楽だし?あんまり体の水分使わなくて済むから。
そう言ってえへっと笑っていると、ユウちゃんが渋い顔をして歩き出した。
「あれユウちゃん、どちらへ?」
部屋の扉へと向かうその後ろ姿に、声をかけると溜息と共に振り返る。
「…行くんだろ?探検」
「ユウちゃんも探検したかったの?」
「あほ!俺はお前のお目付役だ!」
「お目付役より恋人のがいいな〜」
「……」
無言でまた睨まれる。
何だよう、軽い冗談(でもない)じゃないかよぅ。と言うとそのまま部屋を出て行ってしまった。
あれ?私が行かないと意味なくね?
おっ、そこの公園に噴水発見。よしよし水飲み場もあるな。あっ、あの家には井戸がある。おっとあそこの所には川まであるじゃないか。こりゃ今回の任務は楽勝だな、きひひひひ。
笑いながらふらふらと歩く私の後ろを、ユウちゃんが不機嫌そうについてくる。
「そうだユウちゃん。
ついでに奇怪な現象が見れるっていう林に行ってみようよ」
振り返り声をかけると「ついでかよ」とツッコミが入る。ニヤリとしてナイスツッコミ、と親指を立てれば無視された。くすん。
そうして着いた先は町外れの林、と言っても元森だったんだろう。あちこちの木が倒れている。炭のようになって。ただそれが火事が原因でない事は一目でわかる。火事ならまとまって木が燃えるはずだが、炭になっている木は点々と、まるでその木だけが燃えたように出鱈目な配置だった。
「明るい所で見ると、悲惨な光景じゃのぅ」
持ち歩いている水を飲みながら呟く。
所々欠けたようなその木立は、奇妙な寂寥感を感じさせる。
「…夜になる度に一本づつ燃えるらしいな」
ユウちゃんが足を乗せると、ちょっと力を加えただけで崩れる燃えカスとなった木。
「狐火みたいなのが現れるらしいね」
まだ元気そうな木に抱きつく。
「よく狐火なんて知ってんな。って何してる」
「ん〜?」
木に抱きつく私を不審そうに見つめる。
「木の中の水の音を聴いてる」
木に耳をつけると、聴こえてくる水の音。まだこの木が生きている、その音。
「…わかるのか?」
「うん、こうして触れると聴こえてくるよ」
心地よいその自然の音に、体がぼうっとしてくる。
「…かわいそうだね」
「何が」