月のかげする水
□月のかげする水 第7壊
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「よっ、アレン。相変わらず白髪がかっこいいね!」
「殴りますよ、かな」
食堂でご飯を食べていると、アレンが後からやってきた。
「今日はちょっと少ないんじゃね?」
そのアレンが持ってきた料理の量(いつもよりみたらしが10本位少なかった)に、私が眉を顰めると、アレンは溜息をつく。
「そうなんですよ、食欲がなくて…」
「ええっ!そりゃいけない!何か悩み事かい?それならこのお姉さんに話してごらん!?」
「お姉さんって一つしか違いませんが…まあいいです、実は…」
「うんうん」
顔を寄せて潜める声。
「実は、あの神田に彼女が出来たらしいんですよ」
「ええっ!!ユウちゃんに!?で、相手は誰!?」
「…それが、」
アレンが困った顔で言い淀む。
「誰?教えてよ!」
強く聞くと少し彼は逡巡したあと、仕方ないと云うように口を開く。
「…それが、かななんです!」
「ええ!?私!?」
「…テメェら、一体それは何の漫才だ?」
ゴゴゴゴと怒りのオーラを背負ったユウちゃんの声が、私の真後ろから聞こえた。おっ、お疲れユウちゃん。
「えっと〜ショートコント、『ユウちゃんの彼女は誰?』」
「変なショートコントすんじゃねぇ」
ガンッ
痛い音と共に私の頭に蕎麦の乗ったトレイ。
「…私テーブルじゃないんスけど…」
「それにモヤシ!何でそれが食欲無くす原因になんだよ、関係ねぇだろ!」
…私の抗議は無視?
「確かにバ神田が誰と付き合おうが1mmも関係ありませんが、この僕より先に彼女が出来るなんて許せません」
パッツンの癖に!生意気なんですよ!
「ああん!?やっぱりテメェはアホだな!彼女とか言っても、」
こいつだぞ!?
ビシッと親指で指差された。
えっ?そうそう私なの〜。えへへ〜、照れるじゃん。
「かな、その反応おかしいさ〜」
バカにされてね?
「ラビっち!」
その声に視線を向けると、ユウちゃんと同じ任務で出ていたラビっちがいた。
わ〜い、久しぶり〜と立ち上がりぎゅうっと抱きつくと、よしよししてくれる。
ラビっちとは最近すれ違いで図書館で会った時以来。
「聞いてよパパ、私に彼が出来たのよ!?」
「何だって!?そりゃ大変だ。早速パパに紹介するさ!」
「この人よ、パパ。
さっ、ユウちゃん挨拶してっ!」
「……」
「あれ〜聞こえないぞぅ?」
「こんな挨拶も出来ない男なんて、パパは反対さ!かな」
「…残念ですね、神田。ぷぷっ」
笑いを堪えたアレンがユウちゃんの肩を叩く。
ラビパパは許さんぞ〜とニヤニヤ笑ってる。
私はといえば、固まって動かないユウちゃんの蕎麦をつまみ食いしていた。
「……刻む」
むむ?
エビ天をくわえた時、ユウちゃんの低い声が聞こえた。
六幻、抜刀
うお、やべっ
「それ反則だよぅ!」
3人で一斉に走り出す。
「かな、何とかするさ!」
「そうです、一応彼女じゃないですか!」
走りながら2人(一応って失礼な)が私に押し付けてきた。
「ええ〜?面倒くさ〜い」
だがしかし、般若の形相で追いかけてくるユウちゃんに、このままじゃ殺される。どうせならベッドで殺して、なーんて言ってる場合じゃない。
「イノセンス、発動。水鏡!」
ごめんね、ジェリーちゃん。ちょっと水貰うよ。
厨房の蛇口から流れる水を私から出た水で誘い、ユウちゃんの周りを水の壁で囲む。
「テメェ!」
一見すると水の中にいるような、ユウちゃんが怒鳴る。
「ざまあみろですね」
「でもこれ、後どうするんさ?」
楽しそうに笑うアレンに、心配そうなラビっち。
「いやぁ、この後どうするかねぇ」
んん〜?と首を傾げて、手に持ったエビ天をもしゃもしゃと咀嚼。
「…いやオレが聞いてんだけど」