月のかげする水
□月のかげする水 第8壊
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何か最近ユウちゃんの様子がおかしい。
いや私をあほ呼ばわりすんのは相変わらずなんだけどね。
「神田の様子がおかしいって?」
リナちゃんがコムぴょんにコーヒーを渡しながら、怪訝そうにソファーに寝転ぶ私を見た。
「そうなんだよぅ〜、うぎゃ」
そのソファーの上でクッションを抱えながらぐてんぐてんしていたら、落ちた。
「もう、何してるのよ」
苦笑しながらリナちゃんが私にもコーヒーを持ってきてくれる。
わーい、リナちゃんのコーヒーだ〜、と喜んでいると、コムイにそれ、コーヒーって言うよりコーヒー牛乳だよね、と言われた。うるせ。
カップを受け取りながら、のっそりと起き上がり座り直す。
「で、どうおかしいんだい?」
こっちも相変わらずの書類の山を崩しながら、室長室のイスをギイギイいわせて、コムイは聞いてきた。
「う〜ん、わかんない」
「わかんないの?」
コーヒーをのみながら頭を捻る私に、コムイも苦笑する。
だって何て言っていいかわかんない。でも妙な感じがするのだ。
時々不意に視線を逸らし、背中を向けて行ってしまう。ただそれが何故だかわからない。怒ってる感じでもなく、かと言って呆れて置いてったって訳でもなさそうだ。
ただ背中を向けられるその瞬間が、とても寂しい。
む〜んとソファーの上で胡座をかいて首を傾げる私を見て、リナちゃんとコムイが顔を見合わせる。
「…それ、神田に直接聞いてみたら?」
私の横に腰掛けながら、リナちゃんが言う。
「…何て?」
首を傾げたままくりんとそっちに顔だけ向ける。
「う〜ん、難しいわね」
そう言って、横のリナちゃんも困った顔。
2人して「う〜ん」と考えていると、それを見ていたコムイが口を開いた。
「まあ、神田くんが何でおかしいかは、何となくボクはわかるな」
「マジっスか!?」
教えてくれ〜と頼むが、ニヤリとするだけで教えてくれない。
「どういう事?兄さん」
「それはね、リナリー」
リナちゃんが不思議そうな顔で聞いたらあっさり口を開いた。何なんだよちきしょー。ムカつくシスコンだな。
「神田くんが闘っているんだよ」
「何と?…ってああ、なるほど」
そうして2人で顔をまた見合わせて頷き合う。
「すいませ〜ん、私、全然わかんないんスけど」
は〜い先生、とビシッと挙手をして言っても、今度は2人して私を見てニヤニヤしてるだけ。
「いいのよ、放っておけば」
神田も色々考えているんだから。
ムカつくな〜と頬を膨らましていると、隣のリナちゃんが苦笑しながら私の頭を撫でた。
「そうそう、いいじゃないの、付き合ってはいるんだし」
良かったね、かなちゃん。
にっこり笑って私を見つめるコムイ。あ、そうだ、思い出した。
「その節はお世話になりました、コムイ様!」
片手を上げ敬礼する私に、コムイは少し引き気味で、リナちゃんは目を丸くしていた。
「コムイ様、ユウちゃんに私と『付き合って』やれって頼んだっしょ?」
おかげで付き合えたぜ、ありがとサンキュー。
そう言ってにっこり笑うとコムイは苦笑した。
「ああ、そうだったね」
そしてコーヒーを飲みながら頷く。
「うん、まあ元々の私の魅力に、ユウちゃんが気付いただけなんだとは思うんだけどね」
えへへ〜と笑って頭を掻いてると、また2人して顔を見合わせて、大きな溜息をつかれた。
「むっ、失礼だな、キミ達!」
なんだよぅ、違うってのか?ひでーなちくしょーっと喚くとリナちゃんも違う違うと首を振った。