月のかげする水

□月のかげする水 第9壊
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ゆっくりと彼に手を伸ばす。するとその体はふいと離されて、その寂しさから逆に私は首にすがりついた。

「お願い…」

哀願するように強請る。
しかし彼は止まったまま動こうとしない。

「どうして欲しい?」

甘い声に私の秘部が潤うのがわかった。

「…意地悪」

誘うように腰をくねらすと、目の前で苦しそうに眉を顰める。

「お互いさまだ」

「ああん!」

そう言ったかと思えば、いきなり突き上げられ、結合部からはいやらしく響く水音。

「いいわっ、気持ちいいの!ねぇ、」




「ねぇ、マイケル?」

「…」

ベッドの上で2人っきり。
今日もマイケルは不機嫌そう。

「…何してる」

「え?マイケルが寝付くまでご本を読んでます」

ベッドに寝転ぶユウちゃんの横に座り込み、楽しく音読。なのにユウちゃんの機嫌が悪いのは何故だ。

「必要ねぇよ」

いいからテメェの部屋に戻れ。
そんでこの本は没収だ。

「ええ〜」

伸びてきた手に『ジェシーの気だるい微睡み』が攫われる。

「こんな本読んでっから変な事考えんだよ」

そしてぽいっとゴミ箱へ。ひでー事すんなぁ。

「…なんスか、変な事って」

こっそり手をゴミ箱へ突っ込むと、目敏く見つかりその手を叩かれた。ちっ。

「変な事は変な事だ」

ユウちゃんは寝ていた上体を起こし、結局またそれを拾い上げ背中へと隠した。

「返してよぅ」

「ダメだ」

今度はその背中に手を伸ばすが、すいっと逃げられる。

「…それ借りてる本だから返してユウちゃん」

「誰からだ」

「誰からっていうより図書館の本なの!」

もっともラビっちチョイスだけどさ。

私の言葉にユウちゃんの眉が上がる。

「…バカ兎に俺から返しとく。あともうテメェみたいなあほにこーゆう本を貸すなともな」

そう言ってその本を持ち、ベッドから立ち上がるユウちゃんの腕にしがみつく。

「ひでーやユウちゃん!」

その横暴さに声を上げるが当然無視だ。ズルズルと私を引きずりながら睨みつけられる。

「離せ」

「ヤダ」

「おまっ」

しがみつく腕をぎゅっと胸に抱きしめると、聞こえてくる焦った声。

「お前、離せっ!」

ドンっと突き飛ばされ思わず尻餅をつく私を、ユウちゃんはハッとした顔で見た。

「…悪い、」

私を立たせようと伸ばされたその手を弾く。

「ユウちゃんのばかっ!」

何なんだよ、この前から!意味わかんない!
どうして私に背中向けるの?いっつも私から離れていっちゃうの、何で!?
ひどいよ、ユウちゃん!私はユウちゃんと付き合ってるはずなのに、全然前より寂しいのは何で!?

座り込んだまま俯いて、床の握りしめられた自分の手を見ていると、その手にぽたっと温い水が落ちた。

うっ、貴重な水分を無駄に出させやがって。

ぐいっと袖にその水分を染み込ませ、私は立ち上がる。

「かな…」

「ねぇユウちゃん。そんなに私って魅力ない?ただコムイに頼まれたから私と付き合ってるだけ?」

見上げてその瞳を覗き込むと、またふいっと逸らされた。ホントにひでーやユウちゃん。

またじんわりと水分が瞳に集まる。
水を操るのはお手のものな筈なのに、なんで私の瞳に集まる水分を、引っ込める事が出来ないんたろう。

「…ユウちゃん、大好きだよ?」

「っ」

「でも、もう、いい」

これじゃ片思いしてて、追いかけ回していた時の方が良かったもん。

動かないユウちゃんの横をすり抜けて、私は部屋を出て行った。
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