月のかげする水

□月のかげする水 第13壊
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身長146cm、体重35kg
B72cm W51cm H75cm

「むむぅ〜」

それはアレンが『ジェシー』を持って怒鳴り込んでくる前の日の夜。
見舞いに来たんだか笑いに来たんだかわからん3人が、帰ってからの事だ。

………全く変化なし。がっくりだな、おい。

さっき婦長に渡された、私の検診データの記載された紙。血液成分だのなんだの載ってはいるが、そんなのよりも何よりも気になるのは私の体型。

この前の検診(3ヶ月前)から全く伸びてねーや。いや身長はこの際どうでもいい。問題は胸だ、尻だ、ナイスバディまでの道のりは長そうだぞ?しかしコムイのヤツめ、完全には成長は止められないとか言ってたくせに、結構止まってないか?くっそう〜、薬の入ってない水飲べばいいのか?飲めば違和感感じるからわかるし、な。でもな〜、そうするとな〜、またコムイがな〜。

ぶつぶつ呟いていると目の前の用紙がひらりと舞い上がった。

「…んだ、これ」

「…げげ」

もちろん窓も開いていない病室に風が吹くはずもなく、その紙を取り上げたのはいつの間にか来たユウちゃんだった。

「返せよぅ」

手を伸ばして取ろうとするが、身長差のあるユウちゃんには当然届かず。思いあまってベッドの上に立ち上がろうとしたら、ギロっと睨まれた。

「何だよぅ、睨む位なら返せよぅ〜」

む〜としてるとユウちゃんは「仕方ねぇな」と返してくれた。うん、仕方なくないよね、私のだよね。

ふてくされたままの私を見て、ユウちゃんは苦笑しながら横のイスに腰掛ける。そして手に持っていたボトルを渡してきた。

「何じゃ?」

「…コムイから預かってきた」

今夜から飲めってよ。

そのボトルに入っているのは、一見何の変哲もない水。

「何の水?」

んん?と不思議に思っていると、ユウちゃんは何故か困ったような顔をする。

「ん?どしたのユウちゃん」

「……」

「んん〜、返事が聞こえないぞぅ〜?」

だがその顔を覗き込んでも視線を逸らされただけ。変なの再びか?とその様子に以前のユウちゃんを思い出すが、背中を向けたりはされなくて、ただ黙ったままだ。
私はちょっと考えて、指を伸ばしてつんっと肩をつつく。するとぴくっ反応して私に向けられる視線。

「…何だよ、って、おい!」

やっと返された反応に嬉しくなった私は、その腕に抱きついた。

「ちゃんと来てくれたんスね」

抱きついたままえへへと見上げて笑うと、少し驚いたような表情をしたが、ユウちゃんもふっと笑って頭を撫でてくれた。

「…約束したからな」

「うんっ」

そうなのだ。昼間ラビっち達が来た時、「また来て」と言った私に、ユウちゃんが答えてくれた言葉。

「夜にまた来るってな」

そう言いながら、さり気なくユウちゃんの腕を抱きしめる私の腕を外し、また昼間のように手を繋いでくれた。

「でも本当に来てくれたから嬉しいよ?」

手を握られてご機嫌になった私が、またえへっと笑ってその繋がれた手に頬摺りすると、ぴくりと上がる眉。あり〜、心なしか妙な緊張感をユウちゃんから感じるぞ?

「どったの、ユウちゃん」

いつものユウちゃんらしからぬ雰囲気を不思議に思って顔を近付けると、ぱし、と顔面を手のひらで抑えられた。むぐぐ。何だかちょっと失礼だな、ユウちゃんてば。
そう思いながら、その手のひらの指の隙間からユウちゃんを眺めると、何だか不思議な顔をしていた。怒っているような、照れているような、だけど思い詰めたような、そんな顔。

「むぅ〜?」

私がどうしたもんかと声を出すと、今度はハッとしたような顔をして、「悪い」といいながらその手を退かす。

「…何か、変だぞ?」

「……」

「私ユウちゃんに何かしたっスか?」

「……」

「もしかして疲れてるとか?」

「……」

「何だよぅ、返事くらいしようよぅ」

「……」

「おーいユウちゃんやーい」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……大好き」

「っ!」

おっ、やっと反応した。
どこ見てんだかわからないような、焦点の合わなかった目がやっと動く。何故なら「大好き」の後に、ほっぺにちゅってしたからなのだ。えへ。

「んで、どしたの?ユウちゃん……ユウちゃん?」

見ると握ってない方の手で顔を隠していた。んん〜、これではかっこいい顔が見れないじゃないか。でも本当に様子が変だ。具合でも悪いのかと本気で心配になってきた時、ユウちゃんがやっと口を開いた。顔は隠したままだが。
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