月のかげする水

□月のかげする水 第14壊
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この5日間(いや正確には4日だが)、何だかそわそわして落ち着かず、体質改善中の為に任務にも就けて貰えず、そしてそんな時に限って遊び相手は誰もおらずと見事な三重苦を味わっていた。
おかげで鍛錬場(暇だから)と食堂(お腹すくから)とを行ったり来たりして、鍛錬場は半壊滅状態、食堂は食料が半全滅状態でコムイに怒られた。
だってさ〜、何か息苦しくてイライラするんだもん。いや身体は調子いいよ?むしろ絶好調?おまけに新しい水のおかげか、今までよりも水の吸収率が各段に上がった気がする。し、か、も、だ、空気中の水分まで吸収している気がするのは私の気のせいか?だからか知らんが何だか身体が妙に重いし、おかげでイライラしてるってわけだ。その上今日に至っては何故か少し身体がぽかぽかしてる。でも熱があるわけでもない。
…ホントに大丈夫なのか?あの水。あんまり気にしない私でもさすがにちょっと不安になる。だけど飲んでしまっている今となってはもう遅い。諦めて飲むしかないのだ。それに今日はユウちゃんが任務から帰ってくる日。約束の5日後、『続き』の日。
……『続き』、うん続きね。ちゅーの続きね。うん、ジェシーとマイケルごっこだよね、うん。それをユウちゃんとね、するわけですよ、今夜。………今夜?

「〜〜〜ぐはっ」

そこまで考えて廊下の床に膝を着く。周りを歩いていた人達が驚いて私を見るが、心配するどころか怪しいオーラを醸し出す私を逆にわざわざ避けて行く。まあ今声かけられても困っけど。

いやあ、待ってましたよ?ユウちゃんとのセックス。確かに「襲って(はぁと)?」とか言ってましたよ?たださ〜、こう恥ずかしいわけよ。いや異存は全くございません。むしろ望むところだ!どーん!といった感じなんだが、問題は私とユウちゃんのそのXデーを(エックスとセックスをかけてみた。さすがだな、私)、前から知っていると言う事にあるのだ。
だいたいさ〜、そうゆうのってその場の雰囲気ってーの?こう手と手が思いがけず触れて目が合って、どっきーんとかなって、そんでちゅーとかかまされて「お前が欲しい」とか言われてさ、それからゆっくり押し倒されるわけよ。そして彼の手によって少しずつ服が脱がされていき、やがてお互いの呼吸が荒くなり手のひらが胸に伸ばされた時には…おっと涎が。
うん、普通はまあそんな流れ?なのに私達の場合は見事に段取られてないかい?だって体質改善完了するのにほぼ5日。次の日すぐに行ってしまったユウちゃんの任務が終わるのが水を渡された5日後の今日。これを段取りと言わずして何と言う。むむむ、という事はコムイも知っているに違いない。さっきコムイに怒られた時についでにと渡された水。「夕食後飲んでね」と言われて渡された水。ものすごーく真剣な顔で渡されたが、私は騙されないぞ?コムイ。その口がピクピクしていたのを私は見た。今にも笑いたいようなそんな顔、誰が信用できるか!思わず受け取ったボトルをその顔面に投げつけたい衝動にかられたが、大人な私は我慢してやったさ、本当にさすがだな、私。
ああでもさ、そうやって今夜ユウちゃんとセックスします、ってゆうのが照れくさいわけ。セックスするって事前にわかってるわけだからね。やはりここは正座をして「よろしくお願いします」とか言った方がいいのか?くぅ〜恥ずかしすぎるぜ!
思わずダンダンダンと身悶えて、廊下を拳で叩くと背中に重み。

「……何してんだ?」

低いその声に油の切れたロボットのようにギギギと振り返ると背中に足。見上げると、

「…お、おお帰りなさい」

不審者を見るように私を見下ろしているユウちゃん。
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