月のかげする水
□月のかげする水 第17壊
1ページ/2ページ
「いいなぁ、リナちゃん」
ばしゃばしゃと水面を叩きながら言うと、「何が?」と訝しげな視線を向けられた。
「だっておっぱい大きい」
「そんな事ないわよ」
むむぅと唸る私を、一緒の湯船に浸かるリナちゃんが苦笑しながら見つめる。今日は久しぶりに会ったリナちゃんと、一緒に教団のお風呂に入っていた。部屋にもついてはいるが、やっぱり大きいお風呂は気持ちがいい。
「普通だと思うけど。それに大きさならクラウド元帥ね、やっぱり」
「…でもリナちゃん、私より大きいっス」
自分のほぼまっ平らに近い胸を眺めて溜息をつくと、リナちゃんはくすりと笑って濡れた私の髪を撫でてくれた。
「大丈夫よ、かな。神田は気にしてないわよ」
「そそそそんな事私言ってないし?」
何言ってるのかなぁ、リナちゃんてば。
むむぅ?とわざとらしく首を傾げればつんっと鎖骨をつつかれた。
「ここ」
あ、あとここと、ここと、あらここにもあるわ。すごいわね。
ふふふと笑ってつつかれたのは、背中と腰骨とおへその下。
「ええと後はお尻にもあるわよ?」
悪戯っぽく私の顔を覗き込まれてかっと顔に血が上る。
「これだけ痕つけられてるのに、胸の大きさなんて気にしてるわけないじゃない」
ね?と優しく微笑むリナちゃんに、照れまくる私。
っか〜、ユウちゃんてば何をしてくれてるかな。いや、ナニはしたけど。……ナニって何。うう、また恥ずかしくなってきたぜ。
思い出してまたばしゃばしゃと水面を叩く私を、リナちゃんはにこにこしながら眺めている。
「でも良かったわね、かな」
「う?」
「神田と上手くいって」
心配してたのよ?
そう言って眉間に皺を寄せる。
「うう〜、リナちゃん大好きだ〜!」
優しいリナちゃんに思わず叫んで抱きつくと、にっこり笑ってウインクする。
「それに神田もね」
「ユウちゃん?」
「そ、神田ってばずっとかなの事好きだったもの。これでやっと想いが通じたわけだしね」
その言葉に、へ?、と思いリナちゃんを見ていると、ぶっと誰かが吹き出す声。隣りの男湯からだった。
「あり〜?そのばかっぽい笑い声はラビっち〜?」
聞き覚えのあるその声に大きな声で叫ぶ。すると「ばかっぽいって何〜。ばかはかなさ〜」と間延びした返事が返ってきた。そのムカつく返事に悪戯してやろうと、「止めなさいって」と止めるリナちゃんから離れて、こっそりイノセンスを発動し、水を引き寄せて壁の向こう側に飛ばす。
「うわっ!」
「冷てぇ!」
んん?声が2人分?そしてこのもう1人の声は、
「テメェかな!何しやがる!」
うっそーん、ユウちゃんではないですか!?
任務でいなかったはずのその声に驚いていると、また聞こえる怒鳴り声。
「あとリナ!テメェもそのあほに余計な事言ってんじゃねぇ!」
その声の横でまたぶぶっと聞こえるラビっちの笑い声。
「リナリーあんましバラしてやるなさ〜。ユウってば真っ赤だぜ」
ぶくくと笑いながらまた聞こえて、リナちゃんが「そうね、ごめんなさい神田。あなたから言うべきよね」と隣りに聞こえるように叫ぶと、「もうテメェら黙れ!俺はもう出る!」とユウちゃんの声が聞こえた。
その言葉に私も慌てて叫ぶ。
「ちょっと待ってくれユウちゃん!私も一緒に出るよぅ」
ざばりと立ち上がると「断る」と即答された。相変わらずつれないっス。
そうは思いながらもリナちゃんに手を振って、風呂場を出て急いで服を着て浴場を出ると、出口の壁に寄りかかったユウちゃんがいた。