月のかげする水
□月のかげする水 第18壊
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辿る指先は私の敏感な箇所を弄ぶ。
「あっ、そんな、ダメ」
そう言いながらも最早熱くなりすぎた身体は、その言葉でしか抵抗出来ていない。
「ダメじゃないくせに」
お見通しだと言わんばかりのセリフと、ふぅっと耳奥に吹きかけられる吐息に腰をくねらせた時、指先がぐぷりと秘部へと侵入してきた。
「あんっ」
こんな所で、こんな事。
いつ人がくるかわからない図書館の、本棚と本棚の谷間で、彼は私を責め苛む。
「本当に、ダメ、」
ああっ、ダメなの。お願い、スティーブ!
「……マイケルはどうした」
列車の座席で任務報告書を書いていた筈のユウちゃんが、顔を上げてギロっと私を見た。
「えっ?マイケルとは別れたっスよ?」
ジェシーは新しい愛を求めてだなぁ、と説明し始めると、その報告書でばしっと叩かれた。
「ろくでもない本ばっか読んでんな」
しかも何だ、別れたって。本当にしょうもねぇ。
イラついた声に私はくふっと笑う。
「何だよぅ、ユウちゃんもこの本に興味ありありだね!」
聞いていない振りをして聞き耳を立てているとは。このツンデレさんめ。よしよし、続きを読んで進ぜよう。ええと、どこからだ?
思わず閉じてしまった『ジェシーの甘い誘惑』を再び開こうとすると「結構だ」と、手で制された。
「どうしてお前はいちいち声に出して読むんだ。そんな本読んでる暇があれば、報告書を書け」
ずずいっと渡そうとしてくる書類を、私は手で制して「結構だ」と言うと「真似すんな」とまたまた叩かれた。
「え〜、だってユウちゃん書いてくれてるしぃ」
「同行任務のお前も書かなきゃ駄目なんだよ!」
そう言ってせっかく広げた本の上に、乗せられる書類。
「おまけにまたノリノリで建物を破壊しやがって」
「ひでーやユウちゃん!ノリノリだなんて!」
「ああっ!?違うのかよ」
「違う!超ノリノリだ!」
ごつん
「〜〜〜マジ痛ぇ!」
くぅっと頭を抱える。
「何が『超ノリノリ』だ!このあほ!俺がコムイに怒られんだよ!
だからお前との任務は嫌なんだ!」
腕を組んで私を睨み付けるその目からは、今にもビームでも出そうな勢い。だけど今のセリフはちょっと聞き捨てならないぞ?
書類を挟んだままの本をパタンと閉じ、座席の横に置いて立ち上がり、ちょんっとユウちゃんの前に立つ。「何だ」と不機嫌そうなその眉間にちゅっとキスをする。
「…本当に嫌?」
首を傾げて問うと、一瞬ぽかんとしたユウちゃんの顔が、次の瞬間かっと赤くなった。わ〜、ユウちゃん照れ屋さんと、その肩を突つけばぴくり、とその眉が上がり、無言で立ち上がる。
身長差30cm以上。距離10cm未満。当然目の前は黒い壁。
んん?前が見えな〜いとほぼ真上を見上げれば、ぱし、と目を塞がれた。
暗い視界に「本当に最悪だ」と呟く声と、一緒に噛まれる唇。
急に塞がれた口が空気を求めて開かれると、するりと入る舌。
「んっ、」
身体がふわりと上昇して、抱っこされてる、と感じた時にはどさりと座席に降ろされた。
「…あんまり俺の忍耐力を試すんじゃねぇよ」
座席に倒され、掌が団服の裾から入ってきて私の肌に直接触れる。
「ちょっ、ユウちゃん!こんな所でダメだよ!」
こんないつ人がくるかわからない列車の個室で、と視界を遮る手を退けようと抵抗すると、「ダメじゃないくせに」と辿るスティーブのセリフ。
「本の『続き』は俺が読んでやる」
滴り落ちるような声音が私の首筋を濡らして、血が滲む程、ユウちゃんにそこを吸われた。
とある駅でユウちゃんと別れてホームで佇む。こっからは違う任務だ。
うう、ちくしょー、エロユウちゃんめ。
まだ重く甘い水分が沈殿する身体が苦しくて、はふ、と呼吸をする。吸われた首筋がじんとして、今にもまた水分が抜けていきそうだったので、とりあえず水分補給。
別にユウちゃんの忍耐力を試した覚えはなないのだが、時々こうやって襲われてしまうのは何故だろう。
そう思ってんん?と首を傾げていると、後ろから「何やってんですか」と声をかけられ、振り返ればそこには若白髪のアレン。
「…何か今、腹立つ事思いませんでした?」
にっこり。
「いや、そんな、若白髪なんて、そんな」
思ってないよ?、と笑顔を返せば「なるほど、コムイさんから預かってきたこれは、いらないと言う事ですね?」と持っていた水を捨てようとする。私が悪かった〜と慌てて謝れば、「わかればいいんです」と再度にっこりとしてそれを渡してくれた。