world is yours

□world is yours 2
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驚いた。
夢かそれとも幻か。
寂しさに負けた私の心が生み出した希望、かもしれない。

…な訳ないか。
多分どこかが開いてて入って来ちゃったんだろう。

コツンとテーブルに猫の遺骨の入った陶器を置いて、その玄関の床に伸びている黒い物体はそのままに、私はその不用心な箇所を捜したが、なぜだかどこも開いてはいなかった。

あれ?おかしいな。

そうは思うが開いてないものは開いてない。不審には思うがまた玄関へと戻りその黒くて綺麗な頭を優しく撫でる。
触れてもぴくりとも動かないその顔を覗き込む。

「…整った顔してる」


端正なその顔は今静かに眠っているようだ。
ぽたりとその顔に雫が落ちて、規則正しく上下するその呼吸が、少しだけ、乱れたような気がする。

「…いいな」

羨ましい。
私もこういう風に生まれたかった。
そうすればきっと、もっと楽に生きてこられたかもしれない。

さっき骨と灰になってしまった仔を思い出す。
すると余計に泣けてきて、どんどん落ち続ける水滴が、その黒い綺麗な形をした頭を濡らしていく。

「ごめん」

涙すら弾くその表面を拭うと、今度はぴくりと身じろぎをした。
そしてゆっくりと見開かれていくその瞳。

「ああ、ごめん。起こしちゃったかな」

また優しく撫でると、首をもたげて私を見つめるその綺麗な瞳は青い。
まだ覚醒しきらないのか、やや呆然として私を見つめるそれを、起こして抱き上げた。

「きみ、うちの仔になる?」

そう言って抱き上げた顔を見合わせて、鼻先にちゅっと口付けると、小さく「にゃー」と返事をしたように、聞こえた。
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