world is yours

□world is yours 15
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「……任務、ですか」

「そうだよ、大分イノセンスの扱いも慣れてきたみたいだし、」

俺が任務を終えて室長室へ行けば、そこには久しぶりに会うアヤの姿。
だがその話す内容に俺は眉間に力が籠もる。

「…おい、コムイ」

意識をせずとも低くなっている声に反応し、二人が同時に俺を見た。

「神田さん」

アヤが嬉しそうに座っていたソファーから立ち上がり微笑むが、俺は逆にその姿に気づいてますます眉間に入る力。それは初めて見る団服。エクソシストである証、ローズクロスのついた黒い団服。

「おかえり、神田くん」

あからさまに不機嫌な俺をコムイが苦笑して眺める。

「どういう事だ。」

団服姿のアヤを上から下まで眺めてからきつい視線を向ければ、少し困ったような顔をして「うん、その事についてなんだけど」と座るように促された。
その言葉に仕方なくソファーには向かうが、俺はそこには座らずに立ったままのアヤの肩を軽く叩き、そのアヤだけを座らせてその横に立つ。

「コムイ、こいつを任務に就かせるにはまだ早い。それにまずは元帥の下で修行だろうが。」

睨みながら吐き出すように言えば辛そうにコムイの瞳の色が変わった。

「うん、いつもはそうなんだけどね…正直、そうしてる時間がないんだ。」

「…何故だ」

「神田くん、わかってて聞いてるだろう?」

溜息が聞こえる。

ああそうだ。俺はわかってる。
最近やたらとAKUMAの出現が多い。あちこちでそれこそLEVEL1からLEVEL3まで出現していて、それに対してのエクソシストの数が確実に足りない。だからそんな修行なんて時間のかかることなんてやってられない。わかってる。そんなのは俺だって。
だが嫌なんだ。少しでもこいつを戦いの場から離しておきたいんだ。もちろん修行だってAKUMAと戦う事はあるだろう。でもAKUMAを倒さなくても責任はそいつにはない。しかしそれが正規の任務だったら?課せられた使命なら?

「…チッ」

舌打ちして横に腰掛けるアヤを見下ろすと、そこには不安そうな茶色い瞳。
見詰めあい絡み合う瞳を逸らさずに、手の甲でその柔らかい頬を軽く撫でる。それは無意識の自分の行動。
すると不安定だった瞳が落ち着いていくのがわかった。それは触れた手の甲から伝わるように。

こいつに辛い目や痛い思いを、もう、させたくない。
こいつを守り、助け、癒し、二度と泣かせたくない。
だが仕方ないのなら。こいつがエクソシストとして戦わなくてはならないのなら。

「…コムイ」

苦い思いで口を開く。
これは、アヤをこの世界に連れてきた俺の責任。

「俺がこいつの任務に同行する。」

いや、同行させてくれ。

視線をコムイへと送る。
少し驚いているようなコムイがそこにいる。
頬に触れる手の甲。そこに小さな柔らかい手のひらの感触。自然と重なる互いの手にまたアヤに視線を落とせば、そこには嬉しそうにまた微笑む瞳。

…違う。

その瞳に胸を騒がせながら思う。

違う、責任じゃない。
一緒にいたいんだ。ただ、俺が、少しでも。
独占したいだけなんだ。ただ、俺が、その全てを。

「…頼む」

柔らかく笑む瞳を見つめ続けながら発する声は、一体誰に向けられているのだろうか。
重なる小さな手の温もりに震える心は、一体どうしたら治まってくれるのだろうか。

俺は本当に、

久しぶりの瞳。
そしてふっくらとした唇が『クロ』と久しぶりの名を辿るのを聞く。

…ああ、俺は本当に。
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