手をのばして抱きしめて

□手をのばして抱きしめて 第10夜
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リナリーはルキの特異な体質をもう知っている。
知った当初はかなりショックを受けていたが、俺との関係を知って(それはそれでショックだったらしいが)今は落ち着いたようだ。

「まあ余程の事がない限り大丈夫さ。ルキは結構用心深いし、おまけに一途だし?」

蕎麦を食べ終わり茶を飲んでいると、意味深に笑って兎が俺を見た

「…何だよ」

「ああそういえば、神田以外に初めてルキと同行したのってラビよね。
その時はもう大丈夫だったの?」

心配そうに兎に問いかける。
そうだ、俺はルキの言葉を信用したが、兎からは何も顛末を聞いていなかった。
『寝てない』とは言っていたが、それ以外に何かされてんじゃないかと、今更ながらあの時のにんまり笑った兎を思い出す。

「…オイ、バカ兎」

「…何さ、ユウ」

怯む兎に六幻を突きつける。この際リナリーの事なんか知るか。

「その時何があったか全て吐け。
でないと…殺す。」

低い声で脅す。
意外な事にリナリーは止めなかった。コイツも興味があるんだろう。ただ俺達のテーブルの周りだけ、人が逃げて行った。

「わかった!わかったから六幻下ろすさ!」

慌てて両手を挙げる。
俺はその答えに無言で刀を引いた。








あの日、報告よりAKUMAが多かったのと、思ったよりイノセンス探しに手間取って、任務完了したのが深夜。帰れずに宿を取る事になったんさ。
ルキはうん、そんな素振りは見せなかったけどやっぱり疲れてたみたいだった。それにユウの事、しきりと気にしてた。だってユウ、ルキを無視してただろ?何かユウの気に障る事したんじゃないかって、行きの列車の中でオレに相談してきたもん。
え?何でオレに怒るんさ。あれはユウが悪いじゃん。賭けだって了承したのはユウだろ?
いやリナリー賭けって言うのはルキがオレと任務に出てもオレと寝るかどうかって言う…ちょっ、なにその軽蔑の眼差し。止めて、机の下で足を蹴るの止めて。
なんでユウも了承したかってそりゃあユウだって不安だったんだろ。だってもしかしたらルキは気持ち以前にその体質のせいでユウと寝てたのかも知れないさ。実際オレだってそう思ってた。
だからオレも賭けたんさ。
正直、ブックマンとしてその体質に興味があったのも事実だけど、まぁぶっちゃけるとオレもルキの事気に入ってたしルキ自身にも興味があったからさ。
だーかーら、六幻に手をかけるなさ。話しを最後まで聞けよ。全部聞きたいんだろ?
うん、でも結局ルキと寝なかった。
発動したから酒は飲んでたけどギリギリの量に留めてたみたいだった。普段は結構飲むのにな。でも急だったから部屋も一つしか取れなかったんだけど、夜寝る時はいつものルキで特に変化はなかった。あ、「寝る」って言ってもお休み〜の「寝る」な。わかってる?あ、そう。
うん続きね。
しばらくそうさね一時間位かな。ルキの周りが炎に包まれて、それから声が聞こえてきたんさ。いや、声っていうより吐息?あの初めてルキの部屋で聞いたようなやつ。苦しいような切ないようなあの声さ。
そりゃあオレだってオトコノコだし?あんな声聞かされたら反応して当たり前って感じでしょ。しかもルキの普段の声ってあんまり高くないじゃん。なのにあんな甘いトーンじゃこっちだってたまんないって。
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