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□王(俺)様と誕生日
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人には向き不向きというのがありまして、先天的な欠陥はどうしようもないんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうか。

「…出来た!…のか?」

仕上がりを眺めて湧く疑問。何かどころかかなり違う…ってそもそもこれを作ろうと選んだ事が間違いなのか?

自分の手元を見て溜め息をつく。
そこには赤い…ロープ?

「ぶっ、何だこれ!大蛇みたい!」

自分で作っておいて自分で吹き出しそれから落ち込む。
自分の類い希なる不器用さに悲しくなる。
上からその赤い大蛇ロープを押すと、中身が空洞なのかふかふかと弾力性のある触り心地。

…こんなの使えないですよね

本当にがっくりと肩を落として最初からやり直そうかと思った時、ジリリとベルの音。

「っ!」

ぴしっと落とした肩を起こす。
お呼びだ!早く行かねば殴られる(殴られた事ないけど)殺される(殺された事ないけど)!と、慌ててその大蛇ロープをメイド服のエプロンポケットに入れ、急いでダッシュで走り出す。
割と近い部屋にいたせいか、すぐに着くは一際大きく重厚なオークで出来た扉の前。所要時間一分弱位?まぁ屋敷内は広いしこれくらいは仕方ない。

コンコン、コンコン

いつものノックは4回、2回叩いて半拍休んでもう2回。
これなら「遅い!」と怒鳴られる事もないだろうと、意気揚々と「失礼します」と扉を開けば…あり?

「…いない」

キョロキョロ見渡す部屋の中。
シンプルだが高そうな調度品が置かれているが、その主が見当たらない。

「絶対ここにいると思ったのですが…」

一体どこに行かれたんでしょうか。ここは一つ名探偵コ○ンくんばりに推理をしてみましょう、と顎に手をかけ首を捻る。

ん〜と、部屋の中は適温(全館空調設備は完璧の為)。ベッドはキチンとメイクされたまま(もう昼過ぎだし、寝てはいないだろ)。朝お持ちした朝食の器も冷えている(だからもう昼過ぎてるし)。

「…これは…」

私の中で何かが閃く。

「朝食の器を片付けるの忘れてた!」

マズい!もしかしてこれが原因で姿を眩ましたのでしょうか!?と焦りながら広いベランダの前のテーブルに置きっぱなしの食器を持ち上げれば、開かれた窓の外から実に心地良い風が入ってくる。

「あ〜気持ちいい〜」

風になびくカーテン。視界に広がる青い空。鳥は囀り木々の揺れる音と目に眩しい緑。一望出来るガーデンには美しい睡蓮咲く大きな池と、太陽に反射して照り輝く綺麗な…黒髪。

「い、いた!」

思わず素っ頓狂な声を上げれば振り返る、怖い顔。

「…『いた』だと?」

「いいいや、いらっしゃられました!」

「二重敬語になってんぞ」

「も、申し訳ありません…って、なぜご主人様はそのような所に?」

食器の乗った銀製のトレイを持ったまま、開け放たれた広いテラスに出れば、「『ご主人様』?」と睨まれた。
その時々の機嫌で呼び方に文句を言うこのお方。今日は『ご主人様』はダメらしい。なので探るように次に『神田様』と呼んだら無視された。これもダメかと『旦那様』と呼んでもこれも無視。『坊ちゃん』にいたっては更なる睨みで返された。つかもう統一してくれ困るんですけどいつもいつも!と思うが当然言えるわけもない。
こっそり溜め息をつくとそれが聞こえてしまったのか、すごい目で睨んできた。…聞こえてはいるらしい。ならばいっその事、今まで何度も怒られた事のある呼び方をしてみるか、と恐る恐る口を開いた。

「ユウ、様」

「……」

あれ?何か今ちょっと反応したっぽい。下のお名前をあまりお気に召していらっしゃらないご様子なので今まで決して呼ばせなかった名前呼び(もちろん何度か試しに呼んだ事はありますが)。でも今、あからさまに反応しましたよね?睨んでないですよね?

いつもと違うその反応。確認するかのようにもう一度小さく「ユウ様」と口に出すと、…何だか今、笑った?
意外なその表情に私は「どうしたんだろ。疲れ目かな」と目をごしごしこする。しかしそのこすった目で何度も見ても、やはりそこには心なしか楽しそうに笑んでいるご主人様、いや今日はユウ様でOKらしい。

「あの〜」

「降りてこい」

「はい?」

急な命令に驚いて手の中のトレイを揺らせば、ガチャンと鳴る食器。下を臨めばうん、お屋敷は天井が高いから、普通の二階に比べると下まで大分高さがある。

「早く降りてこいつってんだろ」

短気でいらっしゃるユウ様。さっきの笑みはすぐ消えて、私が動かないのを見てイライラと歩いてくる私の真下。

「わかりました!今そちらへ廻りますね!」

もう少しでも待たせたらまた怒鳴られそうで、私が踵を返そうとすると、「それじゃ遅い」と私を見上げた。

「飛び降りろ」

…私を殺す気でしょうか。

尚も躊躇う私にユウ様は痺れを切らしてついに怒鳴った。

「早く飛び降りろ!こののろま!こん位の高さで死んだりしねぇよ!…むしろ一回死んどけ」

どうやらやはり私を殺す気のようです。確かに私、本当に役立たずだからな。しかし私はユウ様の専属メイドとして絶対服従を誓っているので(嘘です)、その通りにしないといけないのだ。

よいしょっと枠の上に乗り、私は意を決して飛び降りた。



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