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□王(俺)様とオレ
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(俺にとってお前は…)

(ユウ様にとって私は…?)


うわ〜なんかオレどきどきしてきた!何?マジで告白タイム?頑張れユウ!


(お前は……あー、ええっと…)


天井見ても答えはないって。いいから言っちまえよ。


(ええっと、…そうだ!)


あれ?天井に答えあったんさ?


(お前は俺の……か、家族だっ!!)


……ずっこけた。このへたれ。


オレのどきどきを返せ。そう息を吐いて、気付かないうちに握り締めていた拳を解く。
そしてはぁ〜と再び溜め息をついてゆっくりと閉めようとした扉のその隙間、見つけた嬉しそうな彼女の笑顔にオレは、「ま、いっか」とつられて笑って扉を閉じた。








結局お茶はユウが持って来た。
「ミニスカメイドちゃんは?」と聞いたオレをユウは物凄い不機嫌そうにお茶を差し出しながら、「お前には会わせない」とにべもない。
ありゃもしかしてオレのストライク、バレてたさ?いやでもユウのあの様子ならオレにもチャンスあっかもな、と考えながらずずっとユウが淹れたらしい(緑茶だったし)茶を啜りふと思い出す。

「火傷、してなかったさ?」

「……少し、だけな」

「え、マジ?大丈夫なん?
……つかもしかしてユウ、気付いてた?」

そんな気がして聞いてみれば少しだけ、ほんとに少しだけ口端を上げて「まぁな」と返される。…ん〜なんか、普段気が利かないユウだけにちょっと意外、って言うよりもなんつーか、こう…むずむずすんなぁ。
妙にオレが照れ臭いのはなぜだろう。
まぁしかしどんなにバカで間抜けでどんくさくても、ユウにとってほんとに大事な大事な…

「……あ」

気付いて思わず声が漏れた。
ユウの怪訝そうな表情を視界の隅に入れながら、ああそっかって気付いたんだ。

人に面倒をかけるのもかかるのも嫌がるユウ。そして人と素直に接するのが苦手なユウ。そんなユウが『好き』って言うより選んだ言葉。

「…いい響きだよな」

相変わらず怪訝な表情のユウに視線を向けて、オレはにかっと笑う。

「『家族』ってさ」

「っ」

そう言った時のユウの表情ったら、マジで見物。またまたレアなもん見ちゃったさ、と、取り出した携帯。すかさずパシャリと撮ればユウは怒ってその携帯を取り上げようと手を伸ばす…あれ?昼間もおんなじような遣り取りあったな、これってデジャヴ?
むろんデジャヴ通りにオレが華麗にユウとの攻防を繰り広げていれば、聞こえてきた控え目なノック音に互いに止まった。
それは2回叩いて少し休んでもう2回、特徴のあるノック音。
その音にすぐさまユウは反応して扉の方へと走って行った。んな慌てなくてもいいのにと思いながら、とりあえずリナリーとアレンに今の写真を添付して送信。これで消されても安心さ、オレってほんと頭いい。
『送信完了』の文字を確認してから扉の所で何事か話しているユウの後ろ姿に視線を向けて、ついでにオレは大きな声で問いかける。

「なー、ユウの髪紐って手作りさー?」

この言葉に赤い髪紐を揺らして振り返るユウ。その影に隠れているらしいメイドちゃんからは声だけ。

「はい。私がお作りさせて頂きました。
…あんまり上手くはないんですが」

「おまっ…あ゙ーもう!このバカ女!」

「痛っ。え、どうして叩くんですか?」

「どうしてじゃねぇよ!ホンットにお前は…この間抜け!」

「ひ、ひどいです!さっきは手当てしてくれたりして私、なんてお優しい、と思ったのに!」

「わっ、バカ」

「しかも私の分のお茶まで淹れて下さって、本当に嬉しかったのに!」

「バカっ、もう喋んな」

「うう、バカなのは仕方ないじゃないですか…」

「だな」

「ひどい!」

「テメェが自分から言ったんじゃねぇか!」


…完全にオレの存在を忘れてるよな、これ。
でもま、端から見たらバカなのは2人共だけど、と喧嘩してんだかじゃれ合ってんだかわからない遣り取りを眺める。そこにオレの入る隙なんてとても見つかりそうもないさとぼんやりと考えて、オレは黙って携帯をテーブルに置き、それからがぶりと一口お茶を飲んだ。

…ああ、お茶がおいしいさ〜。





王(俺)様とオレ





でもこうして見てると結構、ユウってメイドちゃんに対して弱々だよな…ぷぷっ。






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