月のかげする水
□月のかげする水 第8壊
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「そう言う意味じゃないのよ、かな」
そう言って、ベッドにまたごろんと寝転がってふてくされる私の肩を叩く。
「んじゃ、どんな意味なんだよぅ」
リナちゃん?とそのかわいい困り顔を見ると、「それは…」と言い淀む。
「そりゃユウちゃんの彼女にはなれたけどさ、全然恋人って感じじゃな〜い。つまんな〜い。また何とかしてよ〜コムイ様〜」
視線をコムイに向けて訴えると、複雑そうな顔。
「何とかって言っても…」
「だ〜か〜ら〜、ナイスバディになる薬を…」
「ダメです」
うわお、即答?
リナちゃ〜ん、コムイが冷たい。
ぎゅっと起き上がって抱きつく。おおいい匂い。
「かなは今のままで充分かわいいわよ」
「うう、ありがと、リナちゃん」
でもユウちゃんがあの任務以来、全く何もしてこないんですぅ、と言うと、驚いたようにその大きな瞳を更に見開く。
「えっ?何かあったの?」
「うん、ちゅーだけは」
「「は!?」」
2人の声が重なる。
そういや言ってなかったっけか。
「え、いつの間に?」
コムイが戸惑ったような声を出す。
「え、この前ユウちゃんと一緒の任務の時?」
でもそれ以来なーんもないっス。襲ってくれ〜って言ってもすぐどっか行っちゃうしぃ。
「「……」」
嘆く私に今度は2人は黙り込む。そうしてまた溜息が聞こえた。
「…神田くん、気の毒に…」
「そうね。かな、あんまり神田を苛めちゃダメよ?」
「…」
ラビっちも同じ事を言ってた事を思い出す。
んん〜、不思議だ。
「…苛めてないっス」
何故か言われた同じセリフに口を尖らすが、2人はまたまた顔を見合わせて、溜息をつくだけだった。
「ね〜ユウちゃん」
「ああ?」
ユウちゃんの部屋のベッドに寝転んで、私は本を読む。ちなみに今読んでるのは『心理学の方程式』だ。ユウちゃんは床に直に座り、私に背を向けて六幻の手入れをしている。
「2人っきりだよ?」
ころころ転がって、その後ろ向きの肩に顎を乗せた。
「…だから?」
手入れの腕を止めるがこっちは見ない。
「そろそろこの私を襲ってみないかい?」
「…あほ」
ビシッとデコピン。痛いっス。
「んじゃちゅーしよ、ちゅー」
痛い額をさすってから腕をその首に回そうとしたら、不意に立ち上がられた。
「んぎゃ」
おかげでベッドから落ちる私。
なのにユウちゃんはそんな私を無視して、背中を向けたまま部屋を出て行こうとする。
「んん〜?どこいくの?」
むくりと起き上がりその背中に聞くと、「コムイに呼ばれてる」と言いながら扉を開けた。
「私も行く〜」
「ダメだ」
ちらりと横目で腰を浮かしかけた私を見て、ユウちゃんは行ってしまった。残されたのはしゅん、とする私。
うう〜、何なんだよぅ、一体!
私が不思議な事。
私から逃げてないか!?ユウちゃん!