world is yours
□world is yours 2
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驚いた。
夢かそれとも幻か。
苛立ち疲れた俺の心が生み出した希望、かもしれない。
気がつけば見たことのない場所に俺はいた。
撫でられている感覚がとても気持ち良くて、心地良さにまだ眠っていたい気分にさせていた。だがそんな俺にぽたりと落ちた水滴。
「…いいな」
女の声。
聞いた事のない声。だが悲しい声だ。
そしてまた、ぽたりぽたりとその水滴がいくつも俺に落ちてきて、心地良かった気分が徐々に苦しいものへと変化していった時、「ごめん」と小さな声が聞こえて、濡れた俺をまた撫でられた。
切ないような響きを持ったその声に、思わず身体を動かし、目を開ければ、そこは知らない場所。
…どこだ、ここは。
まだ覚醒しきらない思考が、ただ知っている場所じゃない事だけを教えてくれていた。
確か、ホームへ戻ろうと扉を開けた所まで覚えている。でも、その後は?
いつもより低い視界。
身体は軽いが声は出ない。むしろ声帯がおかしい。
何だ?と思っていれば何だか尻の辺りがムズムズする。
「ああ、ごめん。起こしちゃったかな」
また女の声がして、俺は視線をそちらへと向けた。
…誰だ。
やはり見たことのない女だ。しかも見たことのない変な格好をしている。
近いな。
至近距離にあるのその女の顔。
泣いていたせいか赤い瞳が痛々しい。
なぜ泣いている。
そう言おうと腕を伸ばそうとした俺より先に、ひょいと抱き上げられ視界が上へと簡単に移動した。
何かおかしい。
そう感じているともっと近付いた女の顔。
「お前、うちの仔になる?」
ゆっくりと紡がれた言葉と共に、女の唇が俺の鼻先に触れる。
そして、驚き戸惑う俺がやっと出した声は、なぜか「にゃー」、だった。