world is yours

□world is yours 7
2ページ/2ページ

…私は間違っていないよね。


伸ばされた掌。
思わず掴んだその掌と共に、私は『クロ』と一緒に扉の向こうへと行った。
暖かく抱きしめられた身体は、とても気持ちが良く、もっと眠っていたい気分にさせる。
規則正しい足音に揺られて、何度か抱え直された。その度に頬同士が触れ合って、傍にいてくれる存在に安堵する。
久しぶりに安心して眠っている気がする。でも、

…やっぱりクロは人間だったんだね。

夢現に思う。

いつも私を何か伝えるように見つめていた。だけど私の心を支えるように黙って傍にいた。

変な仔だとは思っていたのだ。猫らしさがなかった。ただしなやかなその身体だけが、猫だと視認させていたにすぎない。

…でも猫が実は人間でした、だなんて、一体どこのおとぎ話だ。
あんまりにも嫌な事が続いて、夢でも見ているのかな、私。

夢と現実の境目で、私がそんな事を考えていると、やがてゆっくりとその腕から下ろされて、何か弾力のあるものの上に寝かされた。




内容のわからない言語が子守唄のように聞こえる。これは多分、英語、だ。
英語は学校では成績が良かった。だがそれはあくまで成績であって、話せるかと言えばまた別の話だし、聞き取りに関しては早いともう無理だ。

ふと、何かが近付く気配。
私の顔を覗き込む気配。
頭のある所のすぐ傍は『クロ』の気配。
そうして時々『アヤ』と私の名を呼ぶ声がするが、それはさっきの『クロ』の声とは違う。

…誰だろう。

そう考えていると頬を撫でられる感触。
その何だか懐かしいような感触に、ぴくりと瞼が動く。
ゆっくりと瞼を持ち上げて、ぴく、と腕を動かす。
頭を上げて周りを見渡すと、扉の所で見た『クロ』と、見知らぬ男。

…クロは、この人だとして、ならこの男は誰だろう。

そう思って寝ぼけた瞳でぼうっと眺めていると、クロの声。何とか「目が覚めたか」と聞き取れた。

「アヤ。」

頬を撫でていた手が頭に置かれる。私の名と共に、それは労るように。

カンダ

溜め息と知らない男の声。
そして『アヤ』と呼ばれた名前を聞き取った。

人間なの?

どうやら私を人か、と聞いているらしい。

…見てわかんないのかな?

何だか釈然としないその質問に答えようと、私が発した声は、「にゃー」だった。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ