world is yours
□world is yours 8
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「少しずつ慣れてきてるって所だ」
なので俺が時々こうして会話の手助けをしていた。
「なら、良かった」
俺の言葉ににっこりとして、コムイは俺と並んで立っている、目の前のアヤに低い視線を落とす。
「それじゃ早速本題に入るけど、実は、…と、そこじゃ話し辛いな。ささ、アヤちゃん、こっちにおいで」
ボクのお膝の上に!
「……」
膝を叩くコムイに、俺は無言で六幻を抜刀する。
「…いやだなぁ、神田くん。冗談だよ?」
いや、結構本気だっただろ?。
アホコムイの首もとに六幻を当てる。
どうも周り(一部)のこいつに対する扱いが、人に対してのそれじゃない。猫の姿なので視覚的にも仕方ないと言えばそれまでなのだが、俺はこいつの人間時の姿を知っているので、何となく周りのその扱い方が癪にさわった。
「何時言ったらわかる。
『アヤ』は人間だ。」
俺の言葉にコムイは「いやあ、ついね、」とへらりと笑って両手を上げた。
「チッ」
ムカついて舌打ちをすると、ぴょんっとアヤが俺とコムイの間にある、書類だらけのデスクに飛び乗った。
「…ここ、なら、いいですか?」
俺とコムイを等分に見て、そう聞いてくる。
「うん、そこでいいよ!
さ、神田くん、六幻納めて。危ないでしょ」
…危ないのはテメェだ、コムイ。
一瞬人間のアヤがコイツの膝に乗っているのを想像して、やはりムカついたが、近い距離にアヤがいるので仕方なく俺は六幻をひく。
コムイはそんな俺を見て一つ頷いてから、今度は書類の上に乗ったアヤへと話しかけた。
「アヤちゃんは本当に人間、なんだよね?」
「だからそうだと、」
「神田くんは黙ってて」
ボクはアヤちゃんに聞いているんだ。
有無を言わせない口調。俺はその声に黙り込む。
「どうなんだい?キミは人間なのかい?」
コムイは再び同じ質問を、真剣な眼差しで問いかける。
ぴくん、と一瞬アヤは震えて、やがてゆっくりと瞳を上げる。
「…人間、です」
「ならなぜ、今の姿は猫なんだい?」
「それは、私、願ったから…」
「猫になりたいと?」
「そうです」
「なぜ?」
「……」
アヤの瞳が揺れる。
その瞳の色が変化する。
「なぜ猫になりたいと思っ…」
「もういいだろ、コムイ」
たたみかけるように質問をするコムイを俺は遮った。
猫になった理由。それを俺は知っている。だからこそ言わせたくなかった。だからこそ俺はこいつをこっちの世界に連れて来たんだ。
「そんな事聞いてどうする。」
腕を組み睨む。コムイはそんな俺を見て溜め息をついて立ち上がる。
「…可能性だ」
何の、と聞こうとする前に、ずいっとアヤにコムイは顔を近付ける。急に寄られたアヤは驚いて身動き出来ない。
「アヤちゃん、キミは本当は人間だ。だが今は猫の姿だ。そしてその理由はボクにはわからないが、そう願ったからそうなった、そうだね?」
確認するような言葉に、アヤはこくりと頷く。
それをまた確認し、コムイは顔を離した。
「アヤちゃんをヘブラスカの所へ連れて行く。」
「!」
驚く俺に視線を移す。
「適合者、かもしれない。」
「…何だと?」
再び驚く俺を、アヤは不安そうに見上げていた。