嫌い?好き…?
□嫌い?好き…?
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無意識に速くなる歩調。
瑞希の前方には、階段へと続く曲がり角。
瑞希の頭の中は今日読む本のことで一杯で、近づく人影に気づかなかった。
(あの小説の続きがめちゃくちゃ気になるんだよね!)
と、暢気に考えている間にあっという間に曲がり角。
案の定‘ドンッ’と勢いよく誰かにぶつかり、瑞希は尻餅をつく。
「いってて…すみません考え事してて…」
と言いながらなんとか立ち上がってぶつかった相手を見る。
「…え…うそ…」
瑞希の目の前には、学校の王子的存在である、中野結城がいた。
(うわっ!最悪!!よりにもよって中野にぶつかるなんて…)
取り敢えず、早くここから逃げ出したい瑞希は、「さっさと謝って終わらせる」作戦を実行することにした。
「あの…本当にごめんなさい!あたし、よく前を見てなかったから…とにかく、ごめんなさい!!」
「じゃあ、これで…」と言い、その場を立ち去ろうとした瑞希…だが進まない。
中野に腕を掴まれているのだ。
「あの、離してくれませんか?」
早く図書室に行きたいやら、嫌いなやつにぶつかっただわでイライラし始めた瑞希は、ついキツい口調になる。
「あぁ、ごめん。…3組の吉川、だよね?」
瑞希は何故知っている?とか思いながら
えぇ、まぁ…
と答える。
「へぇ…まさか、こんなところで会うなんて」
「…あの、話が全く分からないんですけど」
「いや、こっちの話だから…じゃあ」
「え!?あの、ちょっと!」
(あいつ、勝手に帰りやがった…)
瑞希はムカつくくらい足が長くて背の高い後ろ姿を睨んだあと、また図書室へと急いだ。