恋愛ヴァージン
□トレードマーク
1ページ/1ページ
眼鏡ってその人の1つのトレードマークだ。眼鏡をかけてた人が急に外してたりなんかすると、なにかが足りないなんて気分になる。
「やっぱなにかが足りない」
「眼鏡だよ。わかってるよ」
赤い眼鏡がトレードマークの高遠は今日は珍しく眼鏡をかけてこなかった。まぁ高遠のトレードマークなんてくるくるな髪があるから眼鏡なんてなくてもいいんだけど、やっぱりなにかが足りない気分になった。
「これで髪ストレートとかだったらもう誰かわかんないわね」
「珠子ちゃん、笑顔でオレを傷つけないで」
「傷つけたつもりはないけど」
「オレ今心に深く突き刺さってる」
高遠が眼鏡をかけていない理由。それは眼鏡が壊れたからだ。
部員が壊したとかじゃなく、壊したのは高遠の数多い彼女の1人。
高遠が彼女から殴られるなんてしょっちゅうだったけど、眼鏡が壊されたなんていうのは今回が初めて。
なんでも彼女の勢いあるパンチが眼鏡にとんだらしい。
そして見事にレンズは割れ、高遠は景色がぼやけながらも部室に来た。
「自業自得…?」
「疑問系にしてくれるなんて嬉しいね」
膨れっ面な高遠を見ると、どうやら眼鏡を壊されたのは少しショックだったみたいだ。
壊した彼女はなぜか割れたレンズを持って逃走。向こうも少し気が動転したらしい。
「弁償してもらおー。これ」
レンズが外れ、ただの枠になってしまった物を見つめて高遠が言う。
「でも眼鏡が壊れたパンチを食らわなくてよかったじゃない」
「まーねー。でもお気に入りだったし」
「お気に入りだったの」
「うん。いい色じゃん」
「これを機にコンタクトデビューなんてどう?」
「珠子ちゃんはオレをどうしたいの」
レンズがないただの枠を高遠はかけた。
「あ、それだけでもなんか雰囲気戻るね」
「そう?じゃあかけとく」
トレードマークは大切に
(あれ、でも高遠って髪と眼鏡と白衣でいっぱいあるね)
(だからって髪はストレートにしないよ。その手にあるコテしまって)