恋愛ヴァージン
□続けばいいのに
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「失礼しまーす」
私が来たのは部室ではなく音楽室。響先輩から成瀬さんを連れてこいと命令がでたからだ。
「あぁ皆川」
成瀬さんはピアノの前に座っていて、指を鍵盤の上に置いていた。
「邪魔しちゃいました?」
「いや、さっき弾き終わったとこ」
成瀬さんのピアノの邪魔だけは絶対にしたくない。
だから音楽室に入る前に扉に耳をあてて確認したのだけれど。
「響先輩が早く来いと言っていました」
「もうそんな時間か…」
本当に集中していたらしく時間が経っていたのを知らなかったようだ。
「早く行きましょう。響先輩がうるさいので」
成瀬さんに近づいて言う。そのとき頭に温かい感覚があった。
成瀬さんが私の頭を撫でていた。
「へっ?」
「迎えに来てくれてありがとう」
よしよしというふうに撫でている手は細くてとても綺麗なものだった。
私は顔を真っ赤にしていてうつむいてしまったが、成瀬さんが微笑んでいたのは確かだった。
この時間が永遠に続けばいいのに
(その手は温かくて優しかった)