恋愛ヴァージン

□ピアノ
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「ホントにごめんなさい…」


「いいよ。別に」



今私は成瀬さんと音楽室にいる。そして私はピアノの前に座っている。

理由はもうすぐ音楽のテストがあるから。
しかも実技。


いつも音楽の時間は寝てしまっていて授業もろくに聞いていなかったので、テストと聞いたときはさすがに焦った。



「そうじゃなくて…もう少しなめらかに」



そして今。私は成瀬さんにピアノを教えてもらっている。
私がピアノの前で悩んでいたのを成瀬さんが声をかけてくれたのだ。



「なめらかってこんなかんじですか?」


「もうちょっと力を抜いてもいい」



教え方は丁寧でわかりやすかった。
ただ成瀬さんのピアノの練習時間を奪っていると思うと申し訳なかった。


「もう大丈夫です。どんなかんじなのかわかったので」



かれこれ1時間くらい教えてもらったと思う。外は夕暮れで赤くなっていた。



「そう。わかった」



私は立ち上がり楽譜をまとめた。



「それじゃあ失礼しますね。今日はありがとうございました」


「あ、待って」



出ていこうとした私を成瀬さんは呼び止めた。



「はい?」


「聴いてってよ」



そう言うと返事も待たず成瀬さんはピアノを弾きだした。

私が練習していた曲。
でも私が弾いたものとは違うものに聞こえた。


数分間の演奏だったけれど、ホールなどで聴くよりもずっと感動できた。



「皆川も頑張れ。きっとできるから」



後片付けしている成瀬さんを私はずっと見ていた。

















ピアノはあなたのためにあるんだ。


(そんなありえない考えも、今ならできてしまう)
 

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