恋愛ヴァージン

□悔しいけど
1ページ/1ページ





「あつい…」



気温は35度。
暑苦しい制服を着て、私は通学路を歩いている。

飲み物を飲んでいる人をうらやましく思う。また、苛立ちもある。



「早く…クーラーがついている教室に…」



歩き慣れた道も暑く日影がないと思うと長くて仕方がない。

もちろんそう思うのは私だけではない。周りの人たちだって同じ気持ちだ。



「明日からうちわとか持ってこようかな…」



とぼとぼ歩いていると、なにやら後ろが騒がしくなってきた。
後ろを歩く生徒から「うわっ」とか「危ねぇ」とか声がする。

おそるおそる振り向くとそこには高級そうな…



「くるま…」



高級そうというより高級なんだろう。
けれどこんな広いとはいえない道を車で通ってもらいたくない。歩きにくくなってしまう。



「邪魔だなぁ」



車はどんどんこっちに向かってくる。
私もとりあえず横に寄る。

しかし車は私の真横で止まったのだ。



「珠子じゃないか!」



聞き覚えのある声だ。できればこんな暑い日には1番関わりたくない相手の声。



「響…先輩ですか」


「おう!」



やっぱこの人か…。
暑いのに顔をきらきらさせて眩しい。いや、暑苦しい。



「先輩。そこで車を止めたら他の人たちが迷惑します」


「そうか。じゃあ乗ってくか?」



なんだろう。微妙に話が噛み合ってないような気がする。



「いや、だから車を動かしてください」


「珠子が乗るならいいぞ」



学校まであと歩いて10分くらいだろうか…。
10分の道のりを車に乗って行く必要はない。



「いえ、歩いていけますので」


「じゃあ車はどかさん」



乗らなければいけないのだろうか…。
後ろから「邪魔」って声が聞こえる…。



「わかりましたよ。乗りますから」



そう言えば自動でドアが開いて、私はどんよりとした気持ちで車に乗った。

















悔しいけど涼しい…


(どうした?汗だくじゃないか)

(先輩にはこの辛さがわからないでしょう)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ