恋愛ヴァージン

□今年の
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今年の夏は猛暑だ。
外に出れば身体中の水分がもっていかれ、クーラーのきいた部屋に閉じこもるというこの季節。

去年の私なら閉じこもって夏休みを終わらしていただろう。



「あっつい…」



去年の私なら彼氏と一緒に海になんていかなかっただろう。




「頑張れ皆川。あともう少しだ」



隣で私の彼氏、成瀬さんが言う。
成瀬さんも汗だくでだるそうな表情をしている。

暑すぎて手を繋ぐ気すらおきない。
早く目的地につくこと。それだけのために今歩いているのだ。



「ごめん…。まさか駅から歩くなんて思わなくて」



成瀬さんが申し訳なさそうに言う。



「いえ!誘ってくれて嬉しかったですよ」



成瀬さんが海に行こうと私を誘ってくれたのは4日ほど前のこと。
誘われたときは暑さなど忘れて喜んだものだ。



「ほら!海見えてきましたよ!」



15分ほど歩いただろうか。ようやく砂浜と海が見えてきた。



「人少ないですね」



着いてから辺りを見渡すが、海がきれいなわりに人が少ない。



「あぁ。人が多いと疲れると思って、少ない場所を探したんだ」



さすが成瀬さん。でもよくこんないい場所を見つけたものだ。



「あっちに更衣室あるから」


「それじゃあ着替え終わったらまたここで」



パラソルの前で別れ、私は水着に着替えに行く。この前かわいい水着を買ったばっかなのだ。

私は鼻歌を歌いながら水着に着替えた。






「お待たせしました!」



パラソルに戻ると成瀬さんはもう戻っていた。

成瀬さんの体は女の子がうらやましがるくらいに白かった。



「皆川。水着似合ってる」


「あ、成瀬さんも…」



言われて恥ずかしくなる。

着ているのは白に青のラインがはいったビキニ。なんだか妙に緊張してしまう。



「それじゃあ行こうか」



顔を赤くしていると、成瀬さんは優しく微笑んで手を差し出してくれた。



「はい!」



やっぱり成瀬さんといると落ち着く。

そんな考えをしながら暑くて繋がなかった手を今やっと繋いだ。

















これが今年の夏!!


(うわー!魚いっぱいいますね!)

(…そうだな)

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