恋愛ヴァージン
□すり抜けた
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秋。
今年は夏が長かったと心の中で思いながら音楽室の窓を開ける。
吹き抜ける風は涼しくて気持ちがいい。
ピアノを弾くのをやめて、しばらく窓から外を眺める。今日も来るのかな、なんて思いながら。
「失礼します」
「あぁ」
ほら、来た。
「邪魔しちゃいました?」
「いや、ちょうど休憩しようと思ったとこ」
ここ最近皆川はよく音楽室に来るようになった。
最初は忘れ物なんて言ってた。今では理由なんてないだろう。
別に嫌な気はしないが。
「風、涼しいですね」
いつの間にか皆川は僕の隣に来ていた。
風をあびている皆川の髪は綺麗になびいていて、思わず手が伸びた。
「へっ!?」
もちろん皆川はびっくりした声を出した。
それでも僕は髪に触れたままだった。
「髪、綺麗だな」
言葉に出せば今度は顔を赤くしてうつむかれた。
「そんなこと…ないです」
絞り出したような声を出す彼女の顔はとてもいとおしかった。
君の髪は絡まることなく指からすり抜けた
(さっ寒いので窓閉めましょうか!!)
(そう?すごい暑そうに見えるよ)
(気のせいです!気のせい!)