恋愛ヴァージン

□いつも
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「遅いぞ皆川珠子!」


「ハイハイスミマセン」



なんだその片言の謝罪は!なんて先輩は言っているけど、そこは聞こえないふり。

朝突然の電話で起こされて、今から20分以内に駅前に来いなんてあまりにも無茶すぎる。



「5分遅れただけです」


「俺を1分以上待たせるな」



無茶苦茶だ。



「それで、なんのご用ですか」



このままでは話が進まないので先輩に問いかける。



「ただ珠子に会いたくなっただけだ」



無茶苦茶すぎる。



「それだけのために呼び出したんですか」


「この俺が会いたがっていたんだぞ。来るのは当たり前だろう」


「ではもう会えたので帰っていいですね」



洗濯もしてないし…。というかまだ眠いし…。



「珠子は俺に会いたいと思わなかったのか?彼氏だぞ?」


「休日の朝っぱらにはそんなこと思いません」



ずーんという効果音が似合うだろうか。響先輩は明らかに傷ついた表情を見せている。



「そう…か。珠子は俺に会いたいとは思わないのか…」



さらに沈んでいく響先輩。あぁもう…。



「朝電話が鳴ったときはイラッときましたけど…」



響先輩がまた不安な顔を見せる。



「その……。嬉しかったです。会えて…」



途端に先輩の表情がパアッと明るくなった。



「そうか!やはりそうだよな!珠子も嬉しかったか!!」



あぁしまった。
そう思っても時すでに遅く。



「そうかそうか。そんな珠子には俺と今日1日ずっと一緒にいられる権利をやろう」



まだ昼前。
響先輩は一体どこに行く気なのかはわからないが、私はついていくしか選択肢はないのだった。

















いつもデートは強引に始まる


(早く来い!)

(待ってください…。時間はいっぱいありますから…)

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