恋愛ヴァージン
□小さな
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カラスの鳴く声がする。辺りは暗くなってきて、気温はとても下がっていた。
「寒っ…」
なんでこんな寒い道を歩かなきゃいけないんだ。
理由は簡単。教室に忘れ物をしたからだ。
「オレの馬鹿!」
忘れたのは薬品について細かく書かれたレポート。
明日が提出だったので学校でやっていたらこの有り様だ。
ダッシュで学校まで行きたいが、寒くてこれ以上風をあびたくない。昼はあんなに太陽がでて暖かかったのに…。
やっと学校が見えてほっとする。もちろん学校は真っ暗で教員室以外明かりはついていない。
先生にバレると面倒なので、静かに素早く目的の教室まで行く。
「失礼しまーす」
誰もいないと分かっているが声を出す。こんな静かな教室も珍しいしね。
明かりをつけたらバレるから暗闇のなか自分の席を探す。
「あったあった」
お目当ての物はすぐに見つかった。少しくしゃくしゃになってるけど…。
安心してレポートをバックに入れたとき、近くで足音が聞こえた。
「……」
見つからないように机のそばで身を低くする。
もしかして…。
ある考えがよぎった。
よくあるじゃん。忘れ物を取りに行ったら偶然出会っちゃうパターン。
変な期待を持ちながら誰がいるのか確認しようと廊下を覗き込む。
「…!!やべっ!」
予想はハズレ。
そんなうまい世の中じゃないことは知ってるけどさ。
落胆したオレの近くを女の先生が通り過ぎていく。
「今日もあったはずなのにな」
こんなにもすぐ会いたくなるのはなんでだろう。
少し考えたあと、オレは別の教室に向かった。
「高遠…」
「なーに?」
「私のノートに落書きしたでしょ」
「そんなことするわけないじゃん。つーかできないし」
「そうなんだよね。でもこんなの書くの高遠しか思い当たらなくて」
「なんて書かれてたの?」
「わかんない。日本語じゃないし」
「Je tiens a repondre」
「は?」
「フランス語だね。これ」
「なんて意味?」
「教えなーい」
オレの小さな願望
(叶ったからまぁいいんだけど)