恋愛ヴァージン

□なんで
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「皆川ってさぁ。髪さらさらだよな」



そう言ってきたのは同じクラスの男子。



「そう?ありがと」





只今休み時間中。もっと詳しくいえば昼休み中。

いつもなら響先輩の命令で部室に集まるんだけど、今日はないみたいだ。
だから久しぶりにクラスの友達としゃべっていた。



「皆川はほとんど教室にいないからな〜」


「ほんと。珠子といったらラブ部だもんね」


「なにそのイコール…」



やっぱり友達と話すのは落ち着く。
私が普段関わっている人たちは普通じゃないんだなって思い知らされてるよ。



「皆川ってさぁ」



そして1番最初に戻る。

急になぜか私はさほど話したことがない男子に髪を誉められた。
いや、嬉しくないわけじゃないんだけど…。

え、なにこの空気。



「あ、珠子。私職員室に用があるから」



なにその取って付けたような用事。


あれ。これってまさか…。まさか…。



「俺さ、全然皆川と話したことなかったじゃん。だからこんなこと言うのも急でなんなんだけど…」



これって告白…?



「皆川が嫌じゃなかったらなんだけど…」



どうしようどうしよう。やっぱ好きじゃない相手だし、断るべきだよね。でもなんて…



「俺と……付き合ってほ」

「誰が誰と?」



ん?すごい聞いたことがある声が。



「もしかしてさぁ。あんた珠子ちゃんの彼氏になりたいとか思ってる?」



あぁ見覚えがある白衣が目の前に…。



「珠子ちゃんはラブ部のもんだから。勝手に取ろうとかやめてよね」



見上げればくるくるの頭が。そして眼鏡。
なぜか隣のクラスの高遠が私のクラスにいた。



「次手出そうとしたらただじゃおかないから」



いつにもない怖い声だった。聞いたことのない…っていうわけじゃないんだけど。
あの響先輩とケンカしたとき。それ以上に迫力のある声だった。



「高遠?」


「行くよ珠子ちゃん」



高遠は私の腕をつかみ、顔を青ざめる男子生徒を置いて私を廊下に連れ出した。





「高遠?どうして私のクラスに…」


「あ、そんじゃオレ戻るから!」


「え!?高遠!なんでよ!」


「え〜と。じゃっ!」



廊下に連れ出しといて結局私は1人残されてしまった。

高遠はさっさと自分の教室に戻った。

あぁ。私は教室に入りづらいよ。まだあの子顔青ざめてるし。


あれは、私を助けてくれたと捉えていいのかな?


わからないけどそういうことにしておこう。

















なんで嬉しいなんて思うんだろう…。


(なんでこんな気持ちに…)

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