花びらが舞い戻るとき

□第十四話
2ページ/4ページ



「次回は明日だな。日直。」


「気をつけ。礼。」


ありがとうございました、と生徒の声が揃う。


悦はふぅ、と小さく溜息をついた。


授業のペースは決して早くはない。


疲れる原因は別にあった。


古典の担当しているのが土方だったのだ。


顔を見て授業を聞かなければ、と心がければ心がけるほど授業の内容は頭に入らない。


目が合わないだけ不幸中の幸いか。


「結崎!!」


「っ!はい!」


ようやく返事をしやがったか、と土方が嘆息する。


悦は思わす悲鳴をあげそうになった。


土方が目の前にいたのだ。


「えらくぼけっとしてやがったな。授業が終わったからと気を抜きすぎじゃねぇか?」


「…申し訳ありません。」


軽く頭を下げる悦を見ながら土方は苦笑した。


この真面目さは一つ上にもいたな、と考え、あれとはまた違うかと姿を重ねるのをやめた。


「まぁいい。それで、だ。」


真っ直ぐ土方を見る悦。


気取られてしまわぬよう。


表情にださぬよう。


「暫くお前には俺の手伝いをやってもらう。」


一瞬、理解が追いつかなかった。


思わず零れそうになった言葉を飲みこみ、ただ表情だけはどういう意味だと尋ねる。


「次の時間の用意やら荷物やらを取りにこいってことだ。」


パシリ、つーことだ


そうあっさりと教師らしからぬ言葉で述べた。


「言っとくが拒否権はねぇ。放課後、職員室にこい。以上だ。」


有無を言わせず一方的に会話を終わらせた土方。


呆然としたままの悦を残したまま、土方は去って行ってしまった。


―どういうこと、なの…?


そこへ笑っている平助と困ったような表情の千鶴が。


「今年は悦かー。」


「昨年は平助くんの担当だったの。」


「えっと…?」


未だ状況が飲み込めない。


―いや、飲みこみたくないのだろう。


「土方さんこき使うぜー。」


言われなくても分かっている


その言葉をしっかりと飲み込むと、胸の奥がつきりと痛んだきがした。







.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ