花びらが舞い戻るとき

□第十四話
3ページ/4ページ



そして放課後。


悦は職員室に来ていた。


ドアをノックしようと手を上げるが、その手からは力抜け落ちる。


(どうしてこうなったのかしら…。)


深く溜息をこぼす。


しかしいつまでもこうしてられない。


早いところ問題を解決しなければ。


「結崎じゃねぇか。こんなところでなにやってんだ?」


「、原田先生…。」


びくりとして振り返るとそこには原田が立っていた。


「土方先生に呼び出されちゃいまして。」


「…今年は結崎か。」


それだけで伝わるらしい。


頑張れよ、と髪を乱暴に、それでも手つきは優しく撫でる。


「おーい、土方さん。」


髪の毛を元に戻していると、原田が職員室のドアを開けた。


(どうして呼ぶのよ…。)


今すぐ溜息をつきたい気分だ。


「なんだよ。」


「結崎来てるぜ。」


ぺこり、とお辞儀する結崎。


来たか、と立ち上がる土方。


「こっちだ。」


そう言われ連れてこられた教室の隅にある一部屋。


「"国語総合準備室"…?」


そんな教室まであるのかと悦は溜息をついた。


私立とはいえ教室が多いだろう。


「なにしてやがる。とっとと入れ。」


「…はい。」


そうして悦は日が暮れるまでこき使われた。


プリント整理に教室の掃除、何故か先生のコーヒーを淹れたり、プリントをコピーしたり。


初日だからという理由でしっかり仕事を身につけさせられていた。


「…こんな時間か。」


時計を見ると18時。


生徒はそろそろ帰るべき時間だ。


「もういいぞ、帰って。」


「…はい。お疲れ様でした。」


その声から多少疲れが見え土方は頬を緩めた。


そういえば、と土方が声をかける。


「お前…何処かで会ったことあるか。」


これはこの前の部活の時に感じた"違和感"。


初めて会った気がしない少女。


しかし記憶にはない。


「…ないと、思いますよ。」


ここから結崎の表情は見えない。


「そうか。呼び止めて悪かったな。」


いえ、と小さくこぼし、失礼します、とその声からは何も感じられなかった。


教室から結崎が出て行くと、土方は眉に皺を寄せた。


―…仕事が出来すぎている。


コーヒーを淹れてくるタイミングも、整理も"以前からやってもらっていたような"それぐらい手際が良かった。


土方は何とも言えぬ感覚に溜息をついた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ