短編

□あたたかな午後
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お昼休みが終わったと同時に私は席をたった。
友達には保健室に行ってくると言ってあるから大丈夫だろう。
私は慣れた足取りで階段をテンポよく上がる。
階段を上りきって、目の前にある大きなドアを開いた。

すると私の視界には空中にふよふよと漂うシャボン玉。
またやってるっと少し呆れたように笑いながら、シャボン玉を飛ばしてる張本人の元へ近づく。


「まーたサボってる」

「なまえちゃんもサボっとるぜよ」

「まぁ確かにそうだけど」

「な?俺とおんなじ」


ニッコリ笑うと再びシャボン玉を膨らまし始めたこの男は仁王雅治。
通称まーくん。
私はまーくんの隣に座ると携帯をカチカチ弄り始めた。


「午後の授業なん?」

「理科総合と古典」

「めんど…」

「だからサボってるんじゃん?」

「そうじゃな」


するとまーくんはシャボン玉を吹くのを止めてポケットの中にしまった。
…今日もなのか。


「まーくん?」

「なまえちゃん、早くっ」

「えー…」


ニコニコニコ。
私が嫌な顔をしても早く早くと体育座りしてる足をぺちぺち叩いてくる。

…はぁ、わかったわよ。

観念して私が女座りし直すとまーくんはパァっと顔を明るくさせ、頭を乗せてきた。

はい。見ての通り膝枕です。


「まーくん、膝枕すると足痺れるんだけど」

「まぁまぁ、減るもんやないし」

「いや、何かしら減ってるだろう。多分」


本当に足痺れるんだって。
まーくん、君は誰かに膝枕したことがあるか?
まーくんが思ってるよりかなり辛いんだぞ、かなり!


「だってなまえちゃんの膝枕気持ちえーんだもん」

「どうせお肉たっぷりですよーっだ!」

「素直じゃないのー」


ハハハ。
まーくんは軽く笑うと私のお腹に腕を回しギュッと抱きついてきた。
ちょ、まーくん!
いくらなんでもそれはやめて!
お昼食べたばっかりだからお腹膨れてるんだから!


「ま、まーくん!」

「んー?」

「お腹はダメだって、」

「何で?暖かくて気持ちえーのに」

「暖かくてもダメ!」

「ムゥー…」


しぶしぶ腕を離したまーくん。
偉い偉いと頭を撫でてあげれば気持ちよさそうに目を細めた。
本当、でっかい猫みたい。


あたたかな午後

(…まーくん)
(なん?)
(…足、限界っ)
(もうちょっとー…)
(ぎゃーっ)




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