小さな夢

□The Lost Name And Venomous You
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「あたし、黒って大っ嫌いなの」

緑の髪の少女がチーズハンバーガーを食べながら言った
彼女は今、ハンバーガーショップの一席で青年と向き合っていた

青年は自分の着ていた服を見ながら、あぁ、と納得する

「学校の制服なんだ。しかたねえだろ」

「そうじゃなくて、髪の色。
黒なんて平凡すぎてつまんないわ」

ポテトをつまみながら言う

「平凡って…。
ここは日本だぞ。何人の黒髪がいると思ってんだよ」

「知らないわよ。
とにかく、そういうことだから。あんたと一緒なんて絶対に嫌。
2度とあたしに近付かないで」

ハンバーガーを包んでいた紙をくしゃくしゃに丸めてテーブルの上に置く
隣にあった炭酸ジュースを飲み、音を立ててそれを置いた

「お前、それが命の恩人に向かって言う言葉かよ」

「助けてなんて言ってない。
あんたが勝手にでしゃばっただけでしょ」

ガタン、と音を立てて立ち上がり、いすの上の鞄を持つ

「ハンバーガーご馳走様。
もう助けなくていいわよ」

くるりと後ろを向き、手を振りながら出口へ向かう

「おいっ」

「さようなら」

彼の言葉を遮るように自動ドアの扉が閉まった




















































































小さい頃からよく、胸に穴の開いた化け物に襲われた
それは周りの人間には見えないようだった

昨夜も下校途中に襲われた
一瞬、死を覚悟して目を閉じたが、次に見えたのは黒い着物の青年だった
彼が刀で化け物を切りつけると、それは灰のように崩れて消えた
その青年が先程ハンバーガーショップで向かい合っていた青年だ

今日、学校を早退して町を歩いていたとき再会したのだ
彼はたまたま見つけたといっていたが、実際のところ怪しいものだ
話がしたいと昼食に誘われ、驕りならばと了解した

今となれば断ればよかったと後悔している
予想外の時間の消費だった
早く帰って本でも読もうかと考えていると後ろから肩をつかまれた

「待てよ」

先程の青年だ
走って追いかけてきたのか、肩をわずかに上下させている

「お前、歩くの早いな」

「…何の用?」

にらみながら言う

青年はにやりと不敵に笑って見せた


「お前を俺のものにする」

「……ふざけんのもにっ」

ぐい、と顎を持ち上げられたかと思えば、唇にやわらかい感触

目の前には黒髪の男の顔

状況を把握するのに数秒を要した






























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