小さな夢

□言葉遊び
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創設2年目にして、異例の快進撃を続ける誠凛高校バスケ部
これはその快進撃を影で支えた二人のマネージャー、比奈のちょっとしたお話である




























「さっよなっらさんかっく、まったきってしっかく」

練習が終わったばかりの体育館に響く歌
気持ちよさそうに歌う少女を部員たちは遠くから眺めていた

「木吉…、あれ、なんだ?」

日向が聞いた
彼がいま、あれ、と言ったのは木吉の妹の比奈が歌っている歌だ

「言葉遊び、だそうだ」

ぽりぽりと頬を掻きながら答えた

「あるだろ?さよなら三角、また来て四角ってやつ」

木吉いわく、最近の彼女はそれに自分で勝手にメロディを付けて歌う事がマイブームらしい
たしかによく聞いているとそれらしいフレーズを歌っているようにも聞こえる

(この兄にして、あの妹ありってとこか…)

理解しにくい行動は似ている兄妹だ

再び比奈に目を向けると彼女よりも背の高いもう一人の比奈と話していた

「白上さん!!」

「なに歌ってるの?」

「言葉遊びだよ!」

身長の小さい木吉比奈(141cm)は必然的に彼女を見上げる形になる

「あのねっ私、すごいこと気付いたんだよ!」

高校生と言うより、小学生に近いような笑顔で言った

「すごいこと?」

比奈は思わず首を傾げる
うん、と再び笑顔で答えた

「この歌、火神くんの歌なんだよ!」

「火神くんの?」

歌、と言っても彼女が勝手に歌を付けただけの
それがどう火神とつながるのだろう、と誰もが思った

「白上さんには特別に教えてあげる!」

こしょこしょと比奈の耳元で話す
火神は自分の名前が出された事もあり、その場の誰よりも彼女たちの話が気になった

「ぷ」

比奈が小さく笑った

「あははっ、なにそれ!!」

「ねっ!火神くんの歌でしょ!!」

そうだね、と言った
二人の比奈はしばらくそうして笑っていた

「お前、何話してたんだ〜?」

木吉が近づいてきて妹の頭に手を置く
大きな掌でわしわしと撫でられた彼女の頭は振られたように左右に動く

「お兄ちゃん!」

「俺には教えてくれないのよ〜」

「えー、どうしよっかなぁ」

「比奈ちゃん、せっかくだから皆に教えてあげたら?」

白上の提案にん〜、と考えたようなそぶりを見せる

「白上さんがそういうなら教えてあげる!!」

子供っぽい笑みを見せる
それから比奈は再び歌い出した

「さっよなっらさんかっく、まったきってしっかく!」


さよなら三角

また来て四角

四角は豆腐

豆腐は白い

白いはウサギ



「ウサギは跳ねる、跳ねるは火神!!」






「…は?」

火神の口から空気が漏れた
ね、と比奈は微笑んだ

「…っぷ、はははっ、さすがだ比奈!!
確かに火神は跳ねるよなっ!」

木吉がうんうんと頷きながら妹の頭を撫でまわす

「笑い事じゃねぇっ、ですよ!
比奈!!お前バカにしてんのかっ!」

火神が騒ぎ出す
周りの部員たちは声を出さないように笑っている

「バカになんかしてないもん!!」

ぷぅ、と頬をふくらまして比奈は言う

「落ち着いてください、火神君。
別に間違ってないじゃないですか」

黒子がなだめるように言った
それにすらも火神はぎゃんぎゃんと喚いた

「そうだよ、本当の事じゃない火神くん」

白上も黒子とともに火神をなだめた

「ふ、ふざけんじゃねぇー!!!」

時刻は夜の7時
火神の声が体育館に響いた






























それからしばらく、バスケ部ではこの歌が流行ったとか、流行らなかったとか…
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